「法人カードとは一体何なのか?」よくわかっていない方も多いと思います。今回は、法人カードと個人向けのクレジットカードとの違いを比較しながら「法人カードとは」について解説していきます。
法人カードとは?
法人カードとは
を言います。
例えば
- 会社のプリンターのインクを法人カードで購入する
- オフィスのイスを法人カードで購入する
- 会社のパソコンを法人カードで購入する
- 広告宣伝のためのインターネット広告費の支払いを法人カードでする
- クラウド会計ソフトの料金支払いを法人カードでする
- 接待での会食の支払いを法人カードでする
- 出張先のホテルの料金を法人カードで支払う
- 社員が利用する携帯料金の支払を法人カードで行う
- 会社で利用する車の高速料金の支払を法人ETCカードで支払う
- 会社で利用する車のガソリン代を法人ガソリンカードで支払う
・・・
法人カードの仕組み
法人カードで経費の支払をすると、支払をした加盟店に国際ブランドのカード会社が立替払いをしてくれます。(限度額の範囲内で)
その後、1カ月後~2カ月後に法人カード発行時に登録した法人口座から法人カードの利用額が引き落とされる仕組みとなっています。
法人カードが必要な理由とは?
問題ありません。
個人のクレジットカードでもl買い物はできますから、会社のパソコンを個人のクレジットカードで購入して、領収書をもらっていても、問題はないのです。
しかし、
- 個人のクレジットカードの引き落とし口座 → 個人名義の銀行口座(個人口座)
ですから、後で会社に対して「経費申請書」を提出し、「未払金の清算」をしなければなりません。1件、2件なら問題ありませんが、数十件、数百件の数になってくると、この手間による時間コストもバカにならないの金額になってしまいます。
- 法人カードの引き落とし口座 → 法人名義の銀行口座(法人口座)
に設定できるので、法人カードで経費の支払いをしていれば
- 経費の立替による時間ロス
- 経費の事務所処理による時間ロス
- 経費精算のミスの発生
- 領収書不要(税理士によって見解が異なるため要確認)
というメリットがあるのです。
また、起業したときに、税理士から口酸っぱく「法人と個人の資金を明確に切り分けて」と言われた経験があるかと思いますが、個人のプライベート利用の支払と法人の経費利用の支払を、同じクレジットカードで行ってしまうと、税務署に「脱税」を怪しまれて無駄な税務調査などが発生する可能性もあるのです。
法人カードとは
- 経理作業や事務作業のコスト削減
- 個人と法人のお金の流れを明確に区別する(「脱税」の疑いをもたれない)
ために作るものです。
近年、ビジネス向けのサービスも、「クレジットカード払い」が可能なクラウド系のサービスは増加傾向にあります。
- Yahoo!やgoogleなどのインターネット広告
- ランサーズやクラウドワークスなどの外注利用
- サーバーやドメインなどのWEBサイトに関するサービス
- クラウド会計サービス
- ビジネス情報サービス
- クラウド業務管理システム
- WEB会議システム
- タクシーの事前支払いアプリ
・・・
これらのサービスは「銀行振込」にも対応していますが、入金確認までサービスが利用できないため、銀行振込だと、2営業日~3営業日の時間のロスが発生してしまうのです。
当サイトで行ったアンケート結果を見ても
法人カードの利用経験
- 法人カードの利用経験は、約3割
- そのうちの55.6%が継続利用中
法人カードは、誰が作って、誰が使うものなの?
法人カードを作るのは法人経営者、個人事業主です。
法人カードを発行すると、発行した法人カードの「法人カード会員」になります。
法人カードでは、「親カード(法人経営者、個人事業主が作った法人カード)」に紐づいた「追加カード(子カード)」を役員や社員に発行できます。追加カードで社員や役員が支払った利用額は、親カードにまとめて請求される仕組みです。
例えば
- 親カード(法人経営者、個人事業主が作った法人カード)
- → 社長が利用
- 子カード(追加カード)
- 接待・営業・出張の支払用 → 役員、営業部長
- 経費の支払用 → 経理部長、総務部長、経理担当者
- 広告・宣伝の支払用 → マーケティング部の責任者
というように
経費を利用する部署の責任者に追加カードを発行するケースが多いようです。一般社員全員に追加カードを発行するというケースは、管理が煩雑になるため、あまりありません。
数名の中小企業であれば、経営者のみが利用するというケースも当然あります。
法人カードの名義自体は、個人名義になります。名義が個人でないと、複数の社員に発行したときに誰が使ったかがわからなくなってしまうので、法人カードの名義は、個人名義であり、個人がクレジットカード会社と契約する形を取ります。
法人カード、法人クレジットカード、ビジネスカード、コーポレートカードの違いって何?
明確な定義があるわけではなく、カード会社が法人カードの種類によって自由に名称をつけているだけです。
傾向として
- 個人事業主、小規模事業者(従業員数1名~10名以下)向け → オーナーズカード、ビジネスカード
- 中小企業(従業員数10名~99名以下)向け → 法人カード、法人クレジットカード、ビジネスカード
- 大企業(従業員数100名以上)向け → コーポレートカード
と呼ばれることが多いようです。
例えば、三井住友カードの場合
- 個人事業者向けの法人カード → 三井住友ビジネスカード for Owners
- 中小企業向けの法人カード → 三井住友ビジネスカード
- 大企業向けの法人カード → 三井住友コーポレートカード
と名称をつけて分類しています。
法人カード/ビジネスカード/コーポレートカードの違いは?
「法人カード」は、導入を検討している企業・法人の規模によって、呼び名が異なる場合があります。一般的には、中小企業、個人事業主など20名以下向けは「ビジネスカード」、20名以上の大手企業向けは「コーポレートカード」と呼び分けられています。カード会社によって呼び方は異なりますが、カードの機能が大きく変わることはございません。
その他の法人カード関連のカード
ビジネスアカウントカード
を言います。
個人向けのクレジットカードであっても、ビジネスアカウントカードを追加カードとして発行すれば、法人カードとして使えることになります。
コンパニオンカード
を言います。
法人カードの親カードとは別の国際ブランド、別の優待サービスが利用できるため、親カードが使えない時に活躍する予備の法人カードと言えます。
パーチェシングカードとは
を言います。利用先を限定することで、一般的な法人カードよりも高額な支払いに対応してくれます。
法人カードと個人向けのクレジットカードの違い比較
法人カードと個人向けのクレジットカードの違い比較
比較項目 | 法人カード | 個人向けのクレジットカード |
---|---|---|
カードの種類 | 30枚程度 | 500枚~1000枚 |
一般カード年会費 | 1,000円~2,000円が多い | 無料が多い |
ゴールドカード年会費 | 10,000円が多い | 10,000円が多い |
プラチナカード年会費 | 20,000円~50,000円 | 20,000円~50,000円 |
年会費永年無料カードの有無 | 1枚~2枚 | 100枚以上 |
年会費初年度無料カードの有無 | ~10枚 | 100枚以上 |
ポイント還元率 | 0.5%が平均 | 1.0%が平均 |
キャッシュバック | 可能なカードも多い | 可能なカードは少ない |
利用対象 | 個人事業主、法人経営者とその社員 | 個人 |
利用目的 | 経費や事業性のある支払い | プライベートの支払い |
引き落とし口座 | 法人口座(会社名義) | 個人口座 |
引き落とし日 | 締日+30日前後 | 締日+30日前後 |
支払方法 | 1回払い (一部、経営者のみが使えるカードで、分割払い、リボ払いなどが利用可能) |
1回払い 2回払い 分割払い ボーナス払い リボ払い |
カード名義 | 個人名(会社名の併記が可能) | 個人名 |
必要書類 | 法人の場合 ・登記事項証明書(不要なものもある) ・利用者の本人確認書類 |
・利用者の本人確認書類 |
審査 | 厳しい | 甘い |
発行スピード | 1週間~3週間 | 最短即日発行~1週間 |
ショッピング限度額 | 一般カード30万円~500万円 ※初回は少ない限度額が設定されるケースが多い。利用に応じて増額可能 |
一般カード5万円~100万円 |
キャッシング利用 | 不可。一部個人事業主のみ可、海外利用のみ可 | 一般カード5万円~50万円の範囲で可能 |
追加カード | ・社員用カード →法人カードによっては社員用の追加カードごとに限度額の振り分けが可能 ・法人ETCカード →1枚の法人カードで、複数枚の法人ETCカードが発行可能 ・法人ガソリンカード |
・家族用カード ・ETCカード |
電子マネー | カード発行会社によって使えるものがある。楽天Edy、ID、QuickPay | カード発行会社によって使えるものがある。楽天Edy、ID、QuickPay |
利用可能なブランド | Visa JCB Mastercard Amex Diners |
Visa JCB Mastercard Amex Diners |
独自サービス | ・無料経営コンサルティング ・医療相談 ・ビジネス情報サービスの優待 ・福利厚生サービスの優待 ・融資金利の優遇 ・チケットレス出張 ・法人運賃での飛行機や新幹線利用 |
カードによる |
キャンペーン | 大手のプロパーカードを中心に入会キャンペーンあり。5,000円~20,000円分のポイント | 無料の提携カードを中心に入会キャンペーンあり。1,000円~20,000円 |
コンシェルジュデスク | 一部のゴールドカード、プラチナカード、ブラックカードにある | 一部のゴールドカード、プラチナカード、ブラックカードにある |
保険 | 海外旅行傷害保険 国内旅行傷害保険 ショッピング保険 →保障金額はカードによる |
海外旅行傷害保険 国内旅行傷害保険 ショッピング保険 →保障金額はカードによる |
空港ラウンジ | 国内主要空港 一部の海外主要空港(ハワイホノルル国際空港など) プライオリティ・パス カード独自の海外空港ラウンジ |
国内主要空港 一部の海外主要空港(ハワイホノルル国際空港など) プライオリティ・パス カード独自の海外空港ラウンジ |
主な違いまとめ
法人カードのメリットには
- 法人口座から引き落としができる
- ビジネス向けの優待サービスが充実している
という点があり、
法人カードのデメリットには
- 年会費が高めの設定(年会費永年無料の法人カードは、少ない)
- ポイント還元率が低い
- キャッシングはできない
- 審査が厳しい
- 発行されている法人カードの枚数が少ない(選択肢が図区内)
という点があります。
最大のデメリットは「審査が厳しい」こと。カード会社から見た貸し倒れリスクの違いが大きな違いを生んでいる!
前述した比較表を見れば色々な違いがあることに気付くと思いますが、
最大の違いは、クレジットカード会社から見た「貸し倒れリスクの違い」です。
法人と個人事業主の生存率
分類 | 会社 | 個人事業主 | 事業所全体 |
---|---|---|---|
1年経過後 | 72.8% | 79.6% | 62.3% |
2年経過後 | 60.8% | 69.7% | 47.3% |
3年経過後 | 52.7% | 62.7% | 37.6% |
4年経過後 | 46.5% | 57.1% | 30.5% |
5年経過後 | 41.8% | 52.6% | 25.6% |
6年経過後 | 37.7% | 48.6% | 21.4% |
7年経過後 | 34.3% | 45.1% | 18.2% |
8年経過後 | 31.2% | 41.7% | 15.6% |
9年経過後 | 28.4% | 38.6% | 13.4% |
10年経過後 | 26.1% | 35.9% | 11.6% |
出典:資料:経済産業省「工業統計表」再編加工
これを見ればあきらかですが
個人事業主の生存率は3年経過時には37.6%、3分の2が倒産します。
クレジットカードというのは、1カ月~2カ月、カード会社が加盟店に利用者の立替払いをする仕組みです。
個人の方の利用額を立て替える場合には、カード会社には大きなリスクはありません。安定した収入がある方にしかカード発行しませんし、会社員は減給になっても、赤字になることはないからです。クビになったとしても、転職すれば収入がありますし、アルバイトやパートをしても、1カ月~2カ月分の立て替え分ぐらいは返済できるのですから、カード会社の貸し倒れリスクというのは大きくないのです。
一方で、前述した通りで、法人や個人事業主の生存率は、かなり低いものです。
法人の場合は、倒産と同時に会社経営者が自己hさんするケースも多く、そうなってしまうと、カード会社の債権は無効になり、ほぼ回収はできないのです。
法人カードは、個人向けのクレジットカードと比較して「貸し倒れリスク」が大きいため
- 審査が厳しい
- キャッシングはできない
- 限度額はカード発行直後は低めに設定
- ポイント還元率は低めの設定
- 年会費永年無料の法人カードが少ない
という「デメリット」が発生しているのです。
法人カードのメリットは、様々なビジネス利用で活躍する特典がある点!
法人カードには、個人向けのクレジットカードにはない特典が多く付帯されています。法人カードは「ビジネスの経費利用」を前提として作られたカードですので、特典も、ビジネスよりに設計されているのです。活用するシチュレーション別に紹介します。
ビジネスを加速させてくれる法人カード独自の特典について解説します。
経理
WEB明細
ウェブ上で法人カード、社員用に発行した追加カードの利用明細が確認できます。「どこで、誰が、何に、いくら、使ったか?」が見える化できるので、経費の作業効率が高まります。
経営
四半期レポート
四半期ごとにWEB明細をさらにわかりやすくしたレポートの送付です。経営者の場合は経理の情報を常に把握しているわけではないため、法人カードの利用明細をサマリーとしてレポート表示してくれるサービスによって、大まかな無駄なコストをチェックでき、コスト削減につなげられるのです。
経営コンサルティング
法人カードによっては、経営コンサルタント、経営に関する専門家(税理士、会計士、弁護士)への無料相談をサービスとして提供している法人カードがあります。無料である程度の相談が可能になります。
マーケッティング
ビジネス情報サービス
帝国データバンクの情報や各新聞記事などをチェックするビジネス情報サービスを優待価格で利用することができます。
人事
福利厚生サービス
社員向けの福利厚生を独自に導入するのは中小企業にとってはハードルが高いのですが、福利厚生のアウトソーシングをしている企業のサービスを優待価格で医療することができます。
営業・接待
高級レストラン、高級料亭の2名以上のコースが1名分無料
法人カードによっては高級レストラン、高級料亭の2名以上のコースが1名分無料になるグルメ特典が付帯されているものがあります。1回利用しただけで数千円~数万円のお得になるので、年会費の元を取りやすい使い勝手の良いサービスです。
出張
空港ラウンジ
空港ラウンジが付帯されていれば、飛行機の待ち時間も、部下への指示出しやメールのチェックに利用することが可能です。
法人向けの優待価格
飛行機や新幹線の法人向けの優待価格利用サービスがあります。WEB上で予約ができ、利用履歴の管理もできるのでお得かつ利便性に優れています。
チケットレスサービス
飛行機や新幹線の利用をチケットレスで行うサービスです。ANA、JAL、新幹線などで利用可能です。
法人ETCカード
法人カードと連動したETCカードの発行が可能です。1枚の法人カードに対して複数枚の法人ETCカードが発行可能ですので、事業で車を利用する会社におすすめです。支払いは親カードである法人カードに行き、利用履歴WEB上にも残るので、利用する社用車に搭載しておけば、誰が利用しても問題なく会社の経費として有料道の料金支払いがETCで可能になります。
法人ガソリンカード
法人カードと連動したガソリンカードの発行が可能です。ガソリンカードは、ガソリン代が会員価格になるため、一般価格よりも、1円~2円/リッター安くなります。
総務
ビジネス用品の優待価格利用
配達、バイク便、レンタカー、アスクルのような消耗品、贈答用の花など、様々な商品が5%~10%の優待価格で利用できるものがあります。
レンタルオフィス優待
レンタルオフィスの優待利用が可能な法人カードがあります。都内や出張先での会議などに活躍します。
資金調達
融資金利の優遇
法人カードは基本的にキャッシングができないものですが、カード会社がビジネスローンなどの融資サービスを提供している場合に、法人カード利用者に対して金利優遇で融資をしてくれるカードがあります。
まとめ
法人カードとは
です。
法人カードを作る大きな目的は
- 経理作業や事務作業のコスト削減
- 個人と法人のお金の流れを明確に区別する(「脱税」の疑いをもたれない)
です。
カード会社から見た貸し倒れリスクが高い為
- 審査が厳しい
- キャッシングはできない
- 限度額はカード発行直後は低めに設定
- ポイント還元率は低めの設定
- 年会費永年無料の法人カードが少ない
というデメリットもありますが、
ビジネス利用を前提にしているため
- 四半期レポート
- 経営コンサルティングの相談無料
- チケットレス出張
- 飛行機や新幹線の料金が法人価格
- 福利厚生サービス優待
- ビジネス情報サービス優待
- ビジネス用品優待
- 融資金利優遇
- レンタルオフィス優待
・・・
などのメリットがあります。
「法人カードには、どんなメリットがありますか?」
「個人で持っているクレジットカードと法人カードとは何が違うの?」
「法人カードって誰が作るものなの?社長?役員?社員?」
「ビジネスカードやコーポレートカードと法人カードは何が違うの?」