社員による法人カード不正利用を未然に防ぐための社内ルール・利用規定

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「社員がプライベートの飲食費を法人カードで支払っていたのが発覚した。」
「社員がプライベートのガソリン代を法人カードで支払っていたのが発覚した。」

経営者がこのような愚痴を言っている場面に何度も遭遇したことがあります。

法人カードというのは、非常に便利な経費管理ツールですが、社内のルールを明確に作らないとこのような「社員・従業員による不正利用」が発生してしまいます。今回は、社員による法人カード不正利用を防止するための社内ルールについて解説します。

社員による法人カード不正利用の手口

社員による法人カード不正利用の手口

法人カードは

  • 親カード → 経営者が保有
  • 追加カード → 役員・幹部クラス・経理が保有
  • ETCカード、ガソリンカード → 利用する社員・従業員が保有

という形が一般的です。

不正利用の手口はシンプルで

パターンその1.プライベートの費用を法人カードを使って、証拠を残さない

例えば

自分の車のガソリンを入れて法人カードで支払い、領収書は受け取らない。

パターンその2.プライベートの費用を法人カードを使って、仕事として報告する

例えば

友人と飲み会をしただけなのにも関わらず

【不正利用した社員】法人カードで決済をして、領収書をもらい、経理に「接待費」として提出する
【経理】領収書と法人カードの明細が合致しているので承認する

パターンその3.法人カードで不要な出張交通費を使って、金券ショップで売却して収入にする

例えば

行く必要のない出張を作って、新幹線代を購入し、実際にはいかずに新幹線の切符は金券ショップで現金化する

パターンその4.法人カードで正当な支出に、加えてプライベートな支出を行う

例えば

営業車のガソリンを法人カードで支払う時に、自分で使う灯油も依頼して、灯油代もガソリン代にアドオンさせる

これらは、どれも「業務上の横領」であり「業務上横領罪」というれっきとした罪になります。

現実問題としては、社員・従業員の「業務上横領罪」は、会社の信用を落とす結果になり兼ねないため、法人カードの不正使用レベルでは、起訴されることは少なく、社内で解決する形になるかと思います。

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しかし、「業務上横領罪」という罪を起こしてしまう社員が増えてくれば

  • 発覚しても、会社として信用のマイナス
  • 発覚しなくても、同僚の噂になって社内の雰囲気の悪化

につながってしまいます。

これを防ぐためには「社内ルールの徹底」が重要になるのです。

注意「ルールを厳しくしすぎたら法人カードの意味がない。」

本来、法人カードは、経費申請などの事務作業が「申請する側も」「処理する側も」軽減され、時間コストが軽減できるメリットがあるものです。

不正利用を防ぐために、社内ルールを厳しく取り締まるようになると、その管理に時間を取られてしまい、余計無駄な労力を使うことになってしまいます。

「不正利用防止」と「利便性」のバランスを理解した社内ルールを作る必要があります。

社員による法人カード不正利用を防止するための社内ルール

社員による法人カード不正利用を防止するための社内ルール

ルール案その1.使用できるのは「役職者と経理のみ」

法人カードの追加カードを従業員全員に持たせるようにしてしまったら

  • 不正利用も発生しやすくなる
  • 不正利用を取り締まるコストもかかる

結果になってしまいます。

そのため、法人カードを持たせるのは

  • 部長
  • 課長
  • マネージャー

など、「一定数の部下がいる役職者のみに限定する」ことをおすすめします。

部下が法人カードを使用したい場合は

  • 何に使うのか目的と金額の概算を申告して、上司の法人カードを借りる

という方法を採用します。

利用する人を限定できれば、不正利用も減りますし、不正利用のチェックもしやすいのです。

本来は、他人名義(上司名義)のクレジットカードを別の人(部下)に貸してはいけないのですが、実務上は借りて一時的に利用する形をとる会社も少なくありません。

「部下に法人カードを発行させて、通常は会社で預かる」という方法もありますが、それほど頻繁に利用するものでなければ、上司の法人カードで済ませてしまう方がスマートですし、コストもかかりません。

ルール案その2.社員にも持たせる場合は「上司への事前申告制」を採用する

「社員の法人カード利用を適正か?適正じゃないか?」

経理がすべてを管理しようとしても、

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  • どれが接待で、どれがプライベートな飲み会なのか?
  • どれが営業車用のガソリン代で、どれが自家用車のガソリン代なのか?

判断できないのです。

○○部、○○課、の役職者であれば

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「あれっ、この日は営業車だしていないはずだよな?」
「あいつは接待する機会なんていないと思うけど・・・誰と接待したんだ?」

と、おかしい点を部下の行動と照らし合わせれば、チェックすることができるのです。

部下に法人カードを持たせるときは

事前に法人カードを使う場合には

  • 何に使うのか?
  • いくら使うのか?
  • いつ使うのか?

を報告して、承認してもらって、法人カードを使わせるルールにします。

これであれば、経理は上司から回収した部下の法人カードの利用申請書一覧と、法人カードの明細一覧を付け合わせるだけですので「上司が承認していない利用があれば、経費として認めない」などの対応を取ることができます。

ルール案その3.領収書を受け取ることを義務化する

法人カードの明細があれば、領収書はなくても、会計上経費として認められる可能性が高いです。

しかし、法人カードの明細だけでは

  • 使用者
  • 店名
  • 利用額
  • 利用日付

ぐらいしか記載されていないので「何のために使ったのか?」情報不足でわかりません。

そこで

  • 法人カードを利用したら、領収書(ネットの場合は画面の印刷)を行うこと
  • 領収書には「誰と何に使ったのか?」を記載する

ということを徹底させます。

接待で法人カードを利用しても、領収書はもらって、そこに

「クライアント:○○さん、4名で会食」とメモをしてもらえれば、ある程度の不正利用は排除できるはずです。

※「クライアント:○○さん」という部分をねつ造されてしまう可能性はあります。

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しかしながら、「誰と何をしたのか?」を書かせる行為をすれば、「見られている」と感じるため、不正利用をするモチベーションは薄まるのです。

ルール案その4.不正利用発覚に対する「ペナルティ」を明示する

上記の方法であっても

  • 上司が法人カードを不正利用してしまったら・・・・
  • 部下のウソの申告に上司が気づかなかったら・・・
  • 領収書に書くメモ情報自体がねつ造されてしまったら・・・
法人カードの不正利用は回避できない

のです。

ここで有効な方法は

全社員に対して

  • 法人カードの不正利用は「犯罪」であること
  • 発覚した場合には「降格」「減給」「刑事告訴」などの厳しい対応を取ること

を啓蒙することです。

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悪い言い方をすれば「脅し」ですが

会社全員で作り上げた利益を一部の社員の不正利用で使ってしまうのは

  • 不正利用していない社員にも、
  • 株主にとっても、

不利益ですので、厳格な対応を示すことが不正利用を防ぐ重要なポイントとなるのです。

ルール案その5.利用目的・限度額を細かく制限する

法人カードの場合は、追加カードの限度額を自由に設定できるものがあります。

  • どの役職だと限度額○○万円まで認めるのか

ルール化して決めてしまえば、万が一従業員が不正利用したとしても、会社の損害が大きくならないように歯止めをかけることができます。

また、利用する経費を制限することもできます。

例:出張時

出張の時に法人カードを利用して良いのは

  • 新幹線代
  • ホテル代
  • 飛行機代

のみに制限する

というような形です。

飲食関連の費用などは、カード明細を見ても、適正かどうかわかりません。

逆に、新幹線代、ホテル代、飛行機代などは、利用が明確であり、コストもわかっているものなので不正利用の可能性が低いのです。

ルール案その6.コストを見える化する

例えば

法人カードを利用するのは、上司に限定したとしても

仕事に車を使う企業の場合

  • 従業員が法人ETCカードを持たなければならない。
  • 従業員が法人ガソリンカードを持たなければならない。

というケースが出てきます。

このようなケースでは

従業員あたりのカード利用額を見える化してしまうと「抑止力」になります。

同じ営業スタイルの営業マンが10名いるのにも関わらず

1人だけ他の営業マンの2倍以上法人ガソリンカードを利用していたら・・・

正当な理由がない限り、かなり怪しいということになります。

厳格に法人カードの利用状況を管理するのが労力的に難しい場合は、同じ業務の社員同士、昨年対比などでデータを出して、平均値よりも明らかに突出している人にのみ、ターゲットを絞って調査すれば良いのです。

ルール案その7.役員・部長クラスの利用は厳格に調査する

意外に不正利用をするのは「社員」よりも「役員や部長職」といったことが少なくありません。

役員が何をしていても、なかなか把握することは難しく、社長であっても、役員クラスの方の日常のスケジュールは把握していないものです。

また、経理や経理部長からも、役職が上の「役員」に対して、不正利用を指摘することはしにくいため、ブラックボックスになりやすいのです。

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「部下にルールを守らせるのだから、上司もそれに従いましょう。」

と角が立たないように上記のルールを上司にも守らせることをおすすめします。

法人カード不正利用を防止するための利用規定

法人カード不正利用を防止するための利用規定

法人カード取扱規程

普通預金口座及び法人カード取扱基準に関する規程

(目的)

第1条

「甲」経費決済用普通預金口座(以下「決済口座」という)及びこれを口座とする法人カードは、「甲」社の役職員の国内外の出張時における仮払金の圧縮と出張者に対する機動性、利便性、安全性の確保及び精算事務の合理化、並びにその他の経費の現金出納事務の合理化・簡素化を目的に利用するものとし、決済口座及びカード取扱基準は達に定めるところによる。

(決済口座の設置)

第2条

決済口座とは、「甲」が指定した金融機関に、役職員が「甲」経費決済用の普通預金口座として個人名義で設けるものをいう。
2.法人カード利用による経費の決済は、当該法人カードを利用した者の決済口座において行うものとする。
3.決済口座の管理は名義を有する各役職員が行う。

(カードの発給基準)

第3条

法人カードは、第5条第1項に定める総括管理責任者が、「甲」社の役職員のうち法人カードを保有させることが適当と認められる者に対して発給するものとする。
2.総括管理責任者は、法人カードの発給を受けた者(以下「カード利用者」という。)が、その使用に際し、この達に定める基準に著しく抵触したときは、その発給を取り消すことができる。

(費用負担)

第4条 カードの年会費は、甲の負担とする。

(カードの管理)

第5条

法人カードの管理に関する甲の責任者は、次の各号に掲げるものとする。

(1) 総括管理責任者 総務部長
(2) 連絡責任者 総務課長
(3) 出納責任者 経理課長

2.カード利用者は、善良な管理者の義務をもって、法人カードを保管、使用しなければならない。
3.カード利用者は、氏名、自宅住所及び電話番号が変更となったとき、またはカードの破損・紛失・盗難等の事故があったときは、可及的速やかに最寄りのカード会社事務所に届け出るとともに、甲の連絡責任者に届け出なければならない。

(カードの使用範囲)

第6条

出張命令を受けたカード利用者は、その期間中において発生した甲の経費となるべき費用の支払いは、原則としてこのカードをもって支払うこととする。ただし、タクシー代等の小額支払い及び法人カードが利用できない場合は、この限りではない。

(カードの利用限度額)

第7条

法人カードの利用限度額は、次のとおりとする。ただし、総括管理責任者が特に必要と認めた場合は、この限りではない。
(1)役員及び部長代理以上の職員 00万円
(2)課長代理以上の職員 00万円
(3)その他の職員 00万円

(カードの使用、精算、決済)

第8条

法人カードの使用から決済までの所要手続きは次のとおりとする。

(1)カード利用者が出張するときは、旅費交通費(JR・航空券等)及び宿泊費(国内出張は除く)の支払いは、原則として法人カードによるものとする。
(2)カード利用者は、出張時において法人カードによる支払いを行ったときは、当該相手方より領収書並びに売上票控を受け取るものとする。なお、宿泊費において自動的に私用分が含まれてしまうときは、カード利用者は私用分を領収書において明確に区分しておかなければならない。また、出張時法人にカードにより支払った「甲」経費に関し領収書の取得ができなかったときは、出納管理責任者の押印した証明証(以下「支払証」という。)を作成しなければならない。なお、会合費の支払いの際、米国等において請求書の中にサービス料が含まれておらず、カード利用者が、サービス料を記入しなければならない場合、当該請求書の10%程度を限度として、甲の負担とする。
(3)カード利用者は、出張から帰着後1週間以内に、領収書及び支払証に基づき出張旅費精算書を作成し、経理課に提出するものとする。
(4)海外出張の精算は、経理部が設定する為替交換レートにより経費を円貨に換算して行うものとする。
(5)前2号の場合において、カード利用者は出張旅費精算後により生じる為替損益を、カード会社からの請求金額(利用明細書記載金額)に基づき、雑収入及び雑費により一括精算するものとする。
(6)出納責任者は、予め決裁された出張命令書に基づき、日当・国内出張時の宿泊料(定額)及びカード利用のできない費用を、原則として当該出張者の決済口座に、当該出張者の出発日の2日前までに振込むものとする。
(7)出納責任者は、カード利用者からの出張旅費精算書に基づき、甲負担経費から前号に基づき既に支払った金額を差し引いた残額に相当する金額を、当該カード利用者の決済口座に、カード決済日の前日までに振込むものとする。
(8)カード利用者は、カード会社からの請求金額(利用明細書記載金額)の中に私用分が含まれているときは、その金額を、前号と同じ期日までに決済口座に振込まなければならない。
(9)カード利用者は、30日を超える長期出張をするときは、決済日が遅れることを、当該出張の出発日までに、連絡責任者及びカード会社に連絡しなければならない。
(責任事項等)
第9条
法人カードの使用、精算及び決済は、原則として当該カード利用者の責任において行うものとする。
2.本達及び旅費を規定する規程等に定める範囲を逸脱してカードを使用した場合、若しくは私用経費に法人カードを使用した場合、又は必要な手続きを怠った場合の損害等については、甲はその責に任じない。
3.決済の遅延による遅滞金利は、当該カード利用者の負担とする。
4.紛失又は盗難による法人カードの免責金額が発生したときは、当該金額はカード利用者の負担とする。

(カードの回収)

第10条

総括管理責任者は、カード利用者が次の事項に該当する場合は、速やかに本人から法人カードを回収しなければならない。
(1)退職する場合
(2)転籍、出向等する場合
(3)解雇予告等を受けた場合
(4)カード会社から利用の停止措置を受けた場合
(5)本規則違反等により甲で利用の中止を決定した場合

附 則

この達は、平成○年○月○日から施行し、平成○年○月○日以降精算のものから適用する。

出典:総務の森

まとめ

法人カードを社員・従業員に発行させると

プライベートな費用を法人カードで決済してしまう。

という不正行為が発生する可能性が高いのです。

この行為は、会社の利益を損なう「業務上横領」であり、他の社員や株主にも、大きな影響を与えてしまいます。

金銭的なダメージもありますが、法人カードの不正利用をする社員がいるとなれば、対外的な信用も失墜しますし、社内の雰囲気も悪化してしまうのです。

百害あって一利なし

ですので、不正利用を未然に防ぐために

  1. ルール案その1.使用できるのは「役職者と経理のみ」
  2. ルール案その2.社員にも持たせる場合は「上司への事前申告制」を採用する
  3. ルール案その3.領収書を受け取ることを義務化する
  4. ルール案その4.不正利用発覚に対する「ペナルティ」を明示する
  5. ルール案その5.利用目的・限度額を細かく制限する
  6. ルール案その6.コストを見える化する
  7. ルール案その7.役員・部長クラスの利用は厳格に調査する

などの「社内ルール」を作成することをおすすめします。

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上記の方法で100%法人カードの不正利用がなくなるわけではありませんが、かなり減らせるはずです。法人カードの利用額が大きくなる、社員数が増える、など会社規模が大きくなるにつれ、法人カードの利用規定の必要性も増すので、規約の作成を検討しましょう。