法人カードをレジでかざしたのに、端末が止まって「暗証番号を入れてください」と言われる。社員が暗証番号を知らず、その場で立て替えになる。どちらもよくある話ですが、原因はカードの不具合ではありません。タッチ決済には金額の上限があり、上限を超えると暗証番号の入力に切り替わるからです。この記事では、その上限がいくらなのか、会社によって公表の仕方がどう違うのか、そして2025年3月末に変わったサインの扱いを、カード会社の公式情報で確認します。掲載内容は2026年9月29日に各ページで表示されていたものです。
三井住友カードは、Visaのタッチ決済の上限を原則1万5,000円と公表しています。これを超える支払いはタッチ決済が使えず、サインか暗証番号の入力が求められます。
ただし同社は、加盟店によっては1万円以上で暗証番号が必要になると書いています。別のページには「一定金額(原則1万円)を超えると、決済端末にカードを挿してお支払いいただく場合がございます」という記載もあり、実務上の分かれ目は店側にあります。
JCBは金額を公表していません。「一定金額以上のお支払いの場合は、サインまたはICカードを挿入したPIN(暗証番号)などの本人確認が必要となることがあります」とだけ案内し、具体的な条件は不正防止の観点から公表していないとしています。
そして2025年3月31日をもって、サインによる本人確認は原則廃止されました。止まったときに手を動かすのは、署名ではなく暗証番号です。
かざせるのは原則1万5,000円まで
タッチ決済は、カードや端末をリーダーにかざすだけで支払いが終わる方式です。三井住友カードは「サインレス・暗証番号不要で決済が完了する手軽さが魅力です。しかし、すべての支払いで利用できるわけではありません」としたうえで、上限を明示しています。

| 会社・ブランド | 公表している上限 | 上限を超えたときの扱い | 店舗ごとの差 |
|---|---|---|---|
| 三井住友カード(Visaのタッチ決済) | 原則1万5,000円 | タッチ決済が使えず、サインまたは暗証番号の入力 | 「1万円以上の支払いは暗証番号の入力が必要」と定めている加盟店もある |
| 三井住友カード(ブランド紹介ページの注記) | 一定金額(原則1万円) | 決済端末にカードを挿して支払う場合がある | タッチ決済とならない金額の上限は利用する店舗によって異なる場合がある |
| JCB(JCBのタッチ決済) | 公表していない | サイン、またはICカードを挿入してPIN(暗証番号)などの本人確認 | 具体的な条件は不正防止の観点から公表していない |
この表の1行目と2行目は、どちらも三井住友カードの公式サイトの記述です。1行目は解説記事、2行目はブランド紹介ページに置かれたポイント還元の注記で、文脈が違います。2行目の注記は「1万円を超えるとタッチ決済にならないことがあり、その分はポイント加算の対象にならない」という話で、上限そのものの定義ではありません。読者の立場でまとめると、1万円を超えたあたりから店によって挙動が変わり、1万5,000円を超えればまず止まると考えておくのが実務的です。
分かれ目を決めているのはカード会社ではなく店側
上限がひとつの数字に定まらないのは、金額のしきい値を最終的に決めているのが加盟店と端末だからです。三井住友カードは「上記、タッチ決済とならない金額の上限は、ご利用される店舗によって異なる場合がございます」と明記しています。同じカードで同じ金額でも、店が変われば結果が変わります。
レジで起きる3つの分岐
そのまま通る
上限より下の金額なら、かざすだけで終わります。暗証番号もサインも求められません。
挿し直しになる
店の設定した上限を超えると、タッチでは通らず、カードを端末に挿して暗証番号を入れることになります。
止まったままになる
暗証番号が分からないと、そこから先へ進めません。サインでの代替は原則できなくなりました。
法人カードで問題になりやすいのは3つめです。個人のカードなら本人が暗証番号を覚えていますが、法人カードでは、申し込んだ管理部門と実際に使う社員が別人です。暗証番号を共有していない状態で外回りの社員が高額の支払いをすると、その場で止まります。
JCBは金額を公表していない
JCBの案内は、三井住友カードとは書き方が違います。タッチ決済のページでは、支払い時に「JCBのタッチ決済で」または「JCBで」と伝えて端末にかざすと決済が完了すると説明したうえで、「一定金額以上のお支払いの場合は、サインまたはICカードを挿入したPIN(暗証番号)などの本人確認が必要となることがあります」と書いています。金額は出てきません。

金額を出さない理由も公表されています。JCBのよくあるご質問には「決済方法・金額等の条件によって、暗証番号やサインによる本人確認が不要な場合もあります。具体的な条件は、不正防止の観点から公表されていません」と書かれています。しきい値を公表すると、その直下の金額で不正利用を繰り返す手口を招くためだと読めます。
上限が公表されていない以上、JCBの法人カードを社員に持たせる場合は「金額が大きいときは暗証番号を求められる」という前提で運用を組むしかありません。金額の線引きを社内規程に書き込むと、実際の端末の挙動とずれます。
2025年3月31日でサインは原則廃止された
タッチ決済が止まったときの選択肢は、以前は「サインするか暗証番号を入れるか」でした。ここが変わっています。JCBは、ICチップ付きクレジットカードの安全性を高めるため、2025年3月31日をもってサイン(署名)による本人確認は原則廃止されたと案内しています。

| 場面 | 2025年3月31日まで | その後 |
|---|---|---|
| 店頭でカードを使うとき | サインか暗証番号のどちらか | 暗証番号の入力が必要 |
| サインの扱い | 本人確認の方法として有効 | 原則廃止。ただし店舗の判断でサインによる本人確認を行う場合がある |
| 本人確認が不要な場合 | 金額や決済方法により不要なことがある | 同じく、決済方法・金額等の条件によって不要な場合がある |
| 根拠 | — | クレジット取引セキュリティ対策協議会が定める「クレジットカード・セキュリティガイドライン」での方針変更 |
つまり、タッチ決済の上限を超えたときの受け皿が、実質的に暗証番号ひとつになりました。社員に法人カードを持たせている会社にとっては、暗証番号の周知が決済の成否を直接左右するようになったということです。
法人カードの暗証番号は、使用者が自分で確認する
では、社員が暗証番号を確認する手段はあるのでしょうか。JCBの法人カードの場合、確認の窓口はカードの系統によって分かれています。

JCB法人カードで暗証番号を確認する手順
- 1. カードの系統を見分ける
カード番号が「354」から始まり、表面右上に「CORPORATE」と表示があるカードが、この手順の対象です。 - 2. 使用者専用IDでMyJCBにログインする
会員専用WEBサービス「MyJCB」に、カード使用者専用IDでログインします。「法人専用ID」で入っている場合は、ログインし直す必要があります。 - 3. 暗証番号の照会を選ぶ
「お客様情報の照会・変更」の中の「暗証番号の照会」から確認します。書面での確認も用意されています。
重要なのは、法人専用IDでは確認できないという点です。管理部門が一括して全社員の暗証番号を見に行く運用は想定されていません。カードを渡すときに、使用者本人がMyJCBの使用者専用IDを登録しているかどうかまで確認しておくのが現実的です。
暗証番号を複数回間違えるとロックがかかる仕組みも各社にあります。止まったときに当て推量で入力せず、その場は別の手段で支払い、あとで正規の手順で確認するほうが安全です。カードを持ち出す社員向けの備えとしては、法人カードを紛失したらどうする?もあわせて共有しておくと、外出先での対応が早くなります。
経理側で起きること
決済方式の違いは、経理の手元にも影響します。タッチ決済で通っても、カードを挿して通っても、カード会社の明細に載る内容は同じです。方式の違いは明細に残りません。したがって「タッチ決済だったから証憑が足りない」という事態は起きません。
方式ごとに、経理が押さえるところ
タッチ決済で通ったとき
明細には通常のカード利用として載ります。レシートの保存は通常どおり必要です。
挿して暗証番号で通ったとき
こちらも明細の見え方は変わりません。決済の方式は帳簿上の扱いを変えません。
その場で使えなかったとき
個人立替が発生します。立替精算はカード払いより手間がかかるため、暗証番号の周知は経費精算のコストに直結します。
タッチ決済そのものはポイントの扱いにも関わります。三井住友カードは、対象のコンビニ・飲食店でスマホのタッチ決済を使ったときの還元率を高く設定する一方で、「カード現物のタッチ決済、iD、カードの差し込み、磁気取引は対象となりません」と注記しています。ポイントの前提が決済方式で変わる点は、法人カードで電子マネーにチャージするとポイントは付く?で整理した対象外の考え方と同じ構造です。オンラインでの本人認証については、法人カードの3Dセキュアはどこに届く?も合わせてご覧ください。
よくある質問
- タッチ決済の上限はいくらですか。
- 三井住友カードはVisaのタッチ決済について「原則1万5,000円」と公表しています。1万5,000円を超える支払いはタッチ決済が使えず、サインまたは暗証番号の入力が求められます。加盟店によっては1万円以上で暗証番号の入力が必要になる場合もあると同社は書いています。JCBは金額を公表していません。
- 上限を超えるとどうなりますか。
- 決済端末にカードを挿して、暗証番号を入力する形になります。2025年3月31日をもってサインによる本人確認は原則廃止されたため、署名での代替は原則できません。店舗の判断でサインによる本人確認を行う場合があるとJCBは補足しています。
- 社員が暗証番号を知らない場合はどうなりますか。
- その支払いは完了しません。JCBの法人カードでは、暗証番号の確認はカード使用者専用IDでMyJCBにログインして行う仕組みで、法人専用IDでは確認できません。カードを渡す前に、使用者本人が確認手段を持っているかを確かめてください。
- 金額を分けて2回に分ければタッチ決済で通りますか。
- 店舗の運用によります。1回あたりの金額でしきい値を判定するため、分ければ通ることはありますが、同一の取引を分割する扱いは加盟店規約で制限されている場合があります。レジ側の判断に従ってください。
- タッチ決済かどうかは利用明細で分かりますか。
- カード会社の利用明細には、決済方式そのものは記載されません。ただし三井住友カードのポイント優遇では「カード現物のタッチ決済、iD、カードの差し込み、磁気取引は対象となりません」といった条件があり、還元率の側で差が出ることがあります。
- 公共交通機関でも使えますか。
- 三井住友カードは、バスや電車などの公共交通機関でVisaのタッチ決済の導入が広がっており、乗降時に改札やバス車内の端末にかざすと支払いが完了すると案内しています。海外の店舗や公共交通機関でも利用できるとしています。
- なぜJCBは上限を公表しないのですか。
- JCBは「具体的な条件は、不正防止の観点から公表されていません」と説明しています。しきい値が分かると、その直下の金額に合わせた不正利用を招くためと読めます。
出典
- 三井住友カード「Visaのタッチ決済に上限額はある?店舗や公共交通機関での使い方、注意点を解説」https://www.smbc-card.com/nyukai/magazine/knowledge/visa_touch_limit.jsp(2025年5月27日。原則1万5,000円、超える支払いはサインまたは暗証番号、加盟店によっては1万円以上で暗証番号、公共交通機関での使い方)
- 三井住友カード「これからの支払いはVisaのタッチ決済で」https://www.smbc-card.com/brand/contactless.html(一定金額(原則1万円)を超えると決済端末にカードを挿して支払う場合がある、タッチ決済とならない金額の上限は店舗によって異なる場合がある、カード現物のタッチ決済・iD・差し込み・磁気取引はポイント優遇の対象外)
- JCB「JCBのタッチ決済」https://www.jcb.co.jp/ways-to-pay/contactless.html(券面のタッチ決済対応マーク、「JCBのタッチ決済で」または「JCBで」と伝える、一定金額以上はサインまたはICカードを挿入したPINなどの本人確認が必要となることがある)
- JCB よくあるご質問 No.13397「カード利用時にサイン(署名)ではなく暗証番号が必要と言われました。なぜですか。」https://j-faq.jcb.co.jp/faq/show/13397?site_domain=default(2025年3月31日をもってサインによる本人確認は原則廃止、店舗の判断でサインを行う場合がある、具体的な条件は不正防止の観点から非公表、クレジット取引セキュリティ対策協議会の「クレジットカード・セキュリティガイドライン」に基づく対応)
- JCB よくあるご質問 No.13922「【法人カード】暗証番号の確認方法を教えてください。」https://j-faq.jcb.co.jp/faq/show/13922?site_domain=default(カード番号が「354」から始まり表面右上に「CORPORATE」の表示があるカードは、カード使用者専用IDでMyJCBにログインし「お客様情報の照会・変更」の「暗証番号の照会」から確認。法人専用IDでは確認できない)
掲載内容は2026年9月29日に各ページで表示されていたものです。上限額や本人確認の条件は、カード会社・ブランド・加盟店・決済端末の設定によって変わります。実際の取扱いは、お持ちのカードの発行会社の案内でご確認ください。










