と思っている法人経営者や個人事業主の方も少なくないと思います。しかし、クレジット機能なしの法人ETCカードというのは、おすすめできるものではありません。その理由を解説します。
「クレジット機能なしの法人ETCカード」と「法人カードに付帯されるETCカード」の違い
法人ETCカードとは?
事業で車を利用する会社や個人事業主の場合、有料道路、高速道路を利用するケースも出てくるので、ETCゲートを通過するためには、ETCカードが必要になります。事業用でETC料金を支払うのですから、ETC料金の支払は、直接法人口座から引き落とされた方が経費として処理しやすいため都合が良いのです。
事業で利用する車の通行料金をETCカードを使わずに社員が立て替えるとなると
- ETCレーンが使えない
- ETCレーンでないと通過の時間がかかる
- 立替請求の作業に無駄な時間がかかる
- ETC割引が利用できない
- プライベートで使った料金を請求されるかもしれない
- 経理の管理にも、無駄な時間と労力がかかる
・・・
と色々なデメリットが発生するため
- 営業で車を使う
- イベントで車を使う
- 研修で車を使う
- 現地調査で車を使う
- お客様を送るのに車を使う
- 配送、配達に車を使う
- 出張に車を使う
・・・
というような会社や個人事業主は「法人ETCカード」を利用するのです。
法人ETCカードを作ろうとなると大きく分けて2つの種類があります。
「クレジット機能なしの法人ETCカード」と「法人カードに付帯されるETCカード」です。
クレジット機能なしの法人ETCカードとは?
例:高速情報協同組合がUCカードと共同で発行している法人ETCカード ※クレジット機能なし
協同組合とは?
です。
大きな協同組合には「生協」や「農協」があります。
ETCカードを利用したい中小企業が組合を作って、まとめてETCカードを発行したり、ETC料金の集計業務を行ったり、ETC料金の請求書を送ったり、する業務を行う協同組合があり、法人ETCカードを利用したい中小企業や個人事業主を取りまとめて、サービスを提供しているのです。
協同組合が発行している法人ETCカードは、クレジット機能がなく、請求書と口座振替によって支払を行う形を採用しています。
法人カードに付帯されるETCカードとは?
例:三井住友ETCカード ※親カードに付帯される追加カード
クレジットカード会社が発行するETCカードを使えば、ETC料金がそのままクレジットカード決済で支払われます。「取りっぱぐれがない」ので、高速道路を運営する高速道路会社にとっても、非常に都合が良いものなのです。利用者にとっても、自動的に高速料金が支払われる仕組みは、使い勝手の良いものなのです。
ETC料金支払いとクレジットカードは非常に相性が良いサービスであるため、法人カードにも、ほぼ100%ETCカードは用意されていて、追加カードを依頼すれば発行することができます。クレジットカード会社も、法人ETCカードを付帯させた方がカード利用額が大きくなり、加盟店手数料収入が増えるので、積極的に法人ETCカードを発行しているのです。
法人カードを利用すると利用額は登録している法人口座から引き落とされます。法人ETCカードも同様に、利用額は親カードの登録された法人口座から引き落とされる仕組みとなっています。
クレジットカード会社が発行するおすすめの法人ETCカードはこちら
「クレジット機能なしの法人ETCカード」のメリットデメリット
メリット
クレジット機能がないので審査が不要
法人カードを作る時に審査が行われるのは「貸し倒れ」を防ぐためです。クレジット決済の場合は、決済完了後30日~60日後に法人口座から引き落とされますが、この間に会社が倒産してしまえば、クレジットカード会社の貸し倒れ損失になってしまいます。
これを防ぐために法人カードを発行するときには「審査」が行われるのです。クレジットカード会社が発行する法人ETCカードは、親カードである法人カードに紐づいて発行されるため、法人カードの審査に通らなければ発行できません。
協同組合が発行する法人ETCカードであれば、そもそもクレジット機能がないのであれば「審査」の必要性がないのです。
口座振替による後払い
「クレジット機能なしの法人ETCカード」の場合は
- 月末締め翌月20日頃に請求書発行
- 翌々月8日に口座振替
というような流れになっています。
デメリット
出資金が必要
「クレジット機能なしの法人ETCカード」の場合は
出資金1万円
を入会時に支払う必要があります。これは退会時には返還されるものです。
走行料金手数料が必要
「クレジット機能なしの法人ETCカード」の最大のデメリットはこれです。
- ETC料金の集計作業
- ETC料金の請求書発行作業
- ETC料金の請求書送付作業
- 法人ETCカードの申込み管理
・・・
と協同組合が行わなければならない作業も多くあるため、それを走行料金手数料という形で取っているのです。
走行料金手数料の相場
- 通常:毎月の走行金額の5.0%
- ETCマイレージあり:毎月の走行金額の8.0%
とそれなりに高額の手数料が発生してしまいます。
5台の社用車が月1万円分の有料道路を利用した場合
- 通常:1万円 × 5台 × 12カ月 × 5.0% = 30,000円円/年
- ETCマイレージあり:1万円 × 5台 × 12カ
- 月 × 8.0% = 48,000円/年
の走行料金手数料が毎年発生してしまいます。
1枚ごとに発行手数料と年会費も有料
「クレジット機能なしの法人ETCカード」の場合は
- 発行手数料:550円~880円/1枚
- 年会費(税込):550円~880円/1枚
が発生します。
1枚発行するだけなら、それほど気にする金額ではありませんが・・・
10枚、20枚・・・と発行枚数が増えていけば、それなりのコスト負担となってしまいます。
「法人カードに付帯されるETCカード」のメリットデメリット
メリット
完全に無料で作れる
「法人カードに付帯されるETCカード」を発行するときにかかる費用項目は
- 法人カード(親カード)の年会費
- 法人カード(親カード)の発行手数料
- 法人ETCカードの年会費
- 法人ETCカードの発行手数料
の4項目があります。
法人カードによっては
- 法人カード(親カード)の年会費(税込):無料
- 法人カード(親カード)の発行手数料:無料
- 法人ETCカードの年会費(税込):無料
- 法人ETCカードの発行手数料:無料
と全部「無料」で発行できるのです。
「クレジット機能なしの法人ETCカード」にある
- 出資金
- 走行料金手数料
も「無料」です。
また、完全無料の法人カードに付帯されたETCカードであれば
- 1枚作っても、無料
- 10枚作っても、無料
- 100枚作っても、無料
ですから
ポイントが貯まる
法人カードに付帯されたETCカードの利用料金も、法人カード(親カード)の利用額として計算されるので、法人カード(親カード)にポイントプログラムがあれば、ETC料金分にもポイントが加算されます。
ポイント還元率:0.5%
が法人カードの相場ですが、ETC料金の0.5%はポイントで還元されると考えて良いでしょう。
ポイント還元率の高い法人カードはこちら
デメリット
法人カードの審査がある
最大のデメリットは、前述した通りで法人カードには審査があることです。
最近は法人カードの審査も、徐々に緩くなってきていますが・・・
- 起業直後で法人カードの審査に落ちた。
- 赤字決算で法人カードの審査に落ちた。
- 税金未納で法人カードの審査に落ちた。
- 借入額が多すぎて法人カードの審査に落ちた。
というケースも多々あるのです。
審査の甘い法人カードはこちら
「クレジット機能なしの法人ETCカード」と「法人カードに付帯されるETCカード」のメリットデメリット比較
項目 | 法人カードに付帯される法人ETCカード | 協同組合が発行する法人ETCカード |
---|---|---|
発行主体 | カード会社 | 協同組合 |
入会金/出資金 | 無料 | 出資金1万円/社(退会時変換) |
発行手数料 | 無料 | 550円~880円(税込)/枚 |
年会費 | 永年無料、初年度無料のものも多い。 | 550円~880円(税込)/枚 |
走行料金手数料 | 無料 | 毎月の走行金額の5.5~8.8% |
発行枚数 | 親カード1枚につき数枚~数十枚 | 無制限だが1枚ごとに費用が発生する |
支払方法 | クレジット払い(親カード登録の法人口座から引き落とし) | 請求書による後払い |
支払サイト | 締日から支払いまで30日~60日 | 締日から支払いまで30日~60日 |
割引サービス | ETCカードの既存の割引特典 | ETCカードの既存の割引特典 ※一部カードは独自の割引あり |
ETCマイレージ | 利用可能 | 利用可能 |
ポイントプログラム | ポイント還元率0.5%~1.0% | なし |
利用限度額 | あり。親カードの限度額の範囲内で利用できる | なし |
発行までの期間 | 5日~3週間 | 10日程度 |
車両限定 | なし | ないものもある ※一部車両登録が必要なカードあり |
選択肢 | 50枚前後 | 5枚前後 |
審査 | 法人カードの審査が必要。審査は厳しい | クレジットの審査は不要。審査は甘い |
クレジット機能なしの法人ETCカードがおすすめできない理由
「クレジット機能なしの法人ETCカード」はコストが高すぎる!!
ケーススタディとして
- 社用車:5台
- 毎月のETC利用料金:2万円
だと仮定した場合
「法人カードに付帯されるETCカード」を利用すると
選択した法人カード
ライフカードビジネスライトプラス(スタンダード)/一般カード
- 出資金:0円
- 発行手数料:0円
- 年会費(税込):0円
- 法人ETCカード発行手数料:0円
- 法人ETCカード年会費(税込):0円
- 法人ETCカード走行料金手数料:0円
合計:0円
です。
「クレジット機能なしの法人ETCカード」を利用すると
選択した「クレジット機能なしの法人ETCカード」
- 出資金:10,000円/1社
- 発行手数料:500円 × 5枚 = 2,500円
- 年会費(税込):500円 × 5枚 = 2,500円
- 走行料金手数料:2万円 × 12カ月 × 5台 × 8% = 96,000円
合計:111,000円
出資金1万円は退会時返還されるので省くと
合計:101,000円
このコストは発行手数料以外、毎年発生するので
- 1年目:101,000円
- 2年目:98,500円
- 3年目:98,500円
- 4年目:98,500円
- 5年目:98,500円
となります。
かたや「法人カードに付帯されるETCカード」は
- 1年目:0円
- 2年目:0円
- 3年目:0円
- 4年目:0円
- 5年目:0円
ですから、説明するまでもなく、会社の経費削減を実現したいのであれば
法人カードの審査も通る時代になってきた!!
「クレジット機能なしの法人ETCカード」の最大の存在意義は「審査がないこと」でした。
以前の法人カード審査は
- 2期分の決算が終わっていないと審査は通らない
- 十分な利益が出ていないと審査は通らない
- 納税をしていないと審査は通らない
- 経営者の信用情報に問題があると審査は通らない
という傾向が強く、
しかし、最近では
- 法人カードの市場が意外に美味しいことにカード会社が気づいてきた。
- 法人カードの発行枚数が増え、競争が激化している。
- 限度額を抑えることで発行しやすいカードも増えた。
・・・
という傾向が強くなり、以前と比較するとかなり法人カード審査も通りやすくなっているのです。
【体験談】実際に法人カードを10枚作ったからわかる審査の甘い法人カードとは?
上記の法人カード審査の記事を見ても、法人カード審査に通らないという方もいるかもしれません。
その場合は、仕方がありませんから、法人カード審査が通るようになるまでは「クレジット機能なしの法人ETCカード」を利用すれば良いと思います。
「クレジット機能なしの法人ETCカード」はETC割引があるのでは?
「クレジット機能なしの法人ETCカード」のウェブサイトには
という形で「ETC割引」が大々的に掲載されているので
ETC割引料金についてはこちらを参照してください。定期的に割引の割合なども変わっているので定期的なチェックをおすすめします。
まとめ
法人ETCカードには大きく分けて
- クレジット機能なしの法人ETCカード
- 法人カードに付帯されるETCカード
の2種類があります。
どちらにもメリットデメリットがありますが
クレジット機能なしの法人ETCカードのメリット
- 審査がない
クレジット機能なしの法人ETCカードのデメリット
- コストがかなり高額になる
法人カードに付帯されるETCカードのメリット
- 完全に無料で利用できる
- ポイントが貯まる
法人カードに付帯されるETCカードのデメリット
- 審査がある
法人カード審査に通らないから、「クレジット機能なしの法人ETCカード」を選ぶしかないという方もいるかもしれませんが、以前と比較すればかなり法人カード審査は甘くなってきているので、1枚落ちただけであきらめるのではなく、数枚は法人カードの申込みにチャレンジすることをおすすめします。
「請求書での支払いの方が便利だから、クレジット機能なしの法人ETCカードにしよう。」
「法人カードは不要だから、クレジット機能なしの法人ETCカードだけ欲しい」
「法人カードの審査に通らないので、審査に通る法人ETCカードを教えてほしい」
・・・