実は、法人カードではなく、法人デビットカードを使うという選択肢も、経営者は視野に入れておく必要があります。今回は、
法人カードではなく、法人デビットカードを使う選択肢について、メリットデメリットも含めて、丁寧に解説します。
法人カードと法人デビットカードの違い
法人カード(法人クレジットカード)とは
法人が経費支払いに利用する決済カードのこと。VisaやMastercard、JCBの加盟店で利用できる
法人デビットカードとは
法人が経費支払いに利用する決済カードのこと。VisaやMastercard、JCBの加盟店で利用できる
と、ここだけ見てしまえば
法人カードも、法人デビットカードも、同じものです。
しかし、両者には決定的な違いがあるのです。
法人カード(法人クレジットカード)
- 利用日から1カ月後~2カ月後に登録口座から引き落とし
- クレジットカード会社が発行主体
法人デビットカード
- 利用したタイミングでリアルタイムに登録口座から引き落とし
- 銀行が発行主体
という点が違うのです。
法人カードと法人デビットカードの違い比較
比較項目 | 法人デビットカード | 法人カード(法人クレジットカード) |
---|---|---|
発行主体 | 銀行 | クレジットカード会社 |
使える国際ブランド | Visa、Mastercard、JCB、J-Debit | Visa、Mastercard、JCB、AMEX、diners、Unionpay |
ポイント還元率相場 | 0.0%~0.5% | 0.5%~1.5% |
還元方法 | キャッシュバック型が多い | ポイントプログラムが多い |
支払いタイミング | 決済時にリアルタイムで紐づいた口座から引き落とし | 1カ月~2か月後に登録口座から引き落とし |
優待特典 | ほぼない | カードごとにある |
審査 | 審査なし(口座が作れる方なら発行可能) | 審査あり |
使えないケース | 継続支払い、一部店舗 | なし |
その通りです。
法人カードではなく、法人デビットカードを使う選択肢もあるのです。
法人カードではなく、法人デビットカードを使うメリット
メリットその1.審査がない
法人カードの審査というのは、筆者自身も、何度も審査落ちしてしまっているのでわかりますが
法人カードの審査は、結構厳しい
のです。
- 起業間もない会社
- 赤字決算の会社
- 事務所を持たない会社
・・・
などは、なかなか審査が通らないのです。
とくに
- プロパーカードの法人カード
は、審査が厳しく、事業歴がないとなかなか審査に通らないのです。
法人デビットカードの場合は
原則、審査なし
で発行できます。
ただし、注意しなければならないのは
- 与信審査がない
だけであって
- 誰でも審査に通るわけではない
という点です。
- 反社会的勢力
- 事務所がない
- 固定電話がない
- ウェブサイトや会社案内がない
という状況だと、法人デビットカードの引き落とし口座になる、法人口座自体が開設できないため、法人デビットカード自体が発行できないということになってしまいます。
とはいえ、
ですから
- 法人カードの審査に通らない
- 法人カードの審査に落ちた
- 法人カードの審査に通る自信がない
という方の場合に法人デビットカードは有力な選択肢となるのです。
メリットその2.キャッシュバック型が多い
法人カードの場合は、カード利用をした場合に貯まるのは「ポイント」です。
法人デビットカードの場合は、カード利用額の○%が「キャッシュバック」されます。
なぜ、そうなっているかというと
- 法人カード → クレジットカード会社が発行
- 法人デビットカード → 銀行が発行
と、発行主体が異なり、銀行は「ポイントプログラム」を持っていないところが多いため、直接還元する「キャッシュバック」を選択しているのです。
ポイント還元率だけでみると、法人カードの方が高いものが多いのですが・・・
ポイントの場合は
- 使い道を考えなければならない
- ポイントの有効期限がある
- 個人向けに使ってよいのか悩む(回答)
- ・・・
などのデメリットがあるのは事実です。
キャッシュバックであれば
- 自動的に利用額が戻ってくる
- ポイントの使い道を悩む必要がない
- ポイントを使うための無駄な時間が発生する
ため、「面倒くさくない」というメリットがあります。
メリットその3.会計処理がしやすい
単純に経理作業、会計処理のことを考えると
引き落としが遅れてくる法人カードの場合
- 法人カードの利用明細
- 銀行の引き落とし残高
を、見比べながら、利用日、利用内容を精査しなければなりません。
リアルタイムで引き落とされる法人デビットカードの場合
利用日に口座から引き落とされるので
- 銀行の口座残高と法人デビットカードの利用明細の日時が一致している
のです。
メリットその4.利用限度額が大きい
法人カードの利用限度額は
筆者自身の保有カードを見てもらえればわかる通りで
発行済法人カード | 申込日時 | 発行日時 | 発行までの期間 | 発行期間備考 | ショッピング総利用枠 | キャッシング総利用枠 | 審査 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
ラグジュアリーカード/Mastercard Gold Card | 2018年8月8日 | 2018年10月2日 | 55日 | 本人確認書類の再提出あり | 300万円 | 30万円 | 1回目審査通過 |
ラグジュアリーカード/Mastercard Black Card | 2019年8月24日 | 2019年10月3日 | 40日 | - | 100万円 | 0万円 | 1回目審査通過 |
EX Gold for Biz M(エグゼクティブ ゴールド フォー ビズ エム) | 2013年11月10日 | 2013年11月29日 | 19日 | - | 200万円 | 0万円 | 1回目審査通過、起業してはじめて発行 |
アメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カード | 2016年7月28日 | 2016年9月2日 | 36日 | - | 30万円 | 0万円 | 1回目審査通過 |
アメリカン・エキスプレス・ビジネス・プラチナ・カード | 2019年5月17日 | 2019年6月18日 | 32日 | - | 50万円 | 0万円 | 1回目審査通過 |
JCB一般法人カード | 2016年12月15日 | 2017年5月4日 | 140日 | 一度審査落ちの連絡後発行 | 30万円 | 0万円 | 1回目審査落ち、2回目審査通過 |
セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カード | 2016年7月26日 | 2016年7月31日 | 5日 | - | 100万円 | 50万円 | 1回目審査通過 |
三井住友ビジネスカード(クラシック) ※旧券面 | 2017年1月19日 | 2017年2月23日 | 35日 | - | 40万円 | 0万円 | 1回目審査通過 |
ビジネクスト・法人クレジットカード | 2017年3月12日 | 2017年6月8日 | 88日 | - | 50万円 | 0万円 | 1回目審査通過、別会社で起業してはじめて発行 |
ライフカードビジネスライトプラス(スタンダード)/一般カード | 2018年9月5日 | 2018年10月2日 | 27日 | 口座振替依頼書の再提出あり | 70万円 | 0万円 | 1回目審査通過 |
freeeVISAカード | 2018年3月5日 | 2018年4月13日 | 39日 | - | 70万円 | 0万円 | 1回目審査通過 |
ダイナースクラブビジネスカード | 2019年8月21日 | 2019年9月4日 | 14日 | - | 100万円 | 0万円 | 1回目審査通過 |
ダイナースクラブカード+ビジネス・アカウントカード | 2019年7月31日 | 2019年8月14日 | 14日 | - | 100万円 | 0万円 | 1回目審査通過 |
ANAダイナースカード+ビジネス・アカウントカード | 2019年8月21日 | 2019年9月4日 | 14日 | ビジネスアカウントカード発行 | 100万円 | 0万円 | 1回目審査通過 |
ANAダイナース プレミアムカード+ビジネス・アカウントカード | 2020年10月7日 | 2020年10月15日 | 8日 | ビジネスアカウントカード発行 | 100万円 | 0万円 | インビテーション(招待) |
セゾンコバルト・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カード | 2020年5月30日 | 2020年6月4日 | 5日 | 口座振替依頼書の再提出あり | 150万円 | 0万円 | 1回目審査通過 |
NTTファイナンス Bizカード レギュラー | 2020年7月28日 | 2020年8月28日 | 31日 | 本人確認書類の再提出あり | 40万円 | 0万円 | 1回目審査通過 |
JCB CARD Biz | 2020年6月17日 | 2020年6月30日 | 13日 | 口座振替依頼書の提出 | 100万円 | 0万円 | 1回目審査通過 |
- 30万円~300万円の間
- 100万円未満のものが多い
ことがわかります。
- 法人カードを発行したばかりの方
- 外資系法人カード
- 複数枚の法人カードを保有してしまう
という状況では、限度額がミニマムに設定されることが多いのです。この場合、法人カードを利用できないシチュエーションも、出てきてしまうのです。
法人デビットカードの利用限度額は
預金の範囲内
です。
- 1,000万円の預金 → 限度額:1,000万円
- 2,000万円の預金 → 限度額:2,000万円
- 3,000万円の預金 → 限度額:3,000万円
となります。一部の法人デビットカードでは、上限が決まってしまうものもありますが、それでも数千万円までは、預金額の範囲内で利用できるのが法人デビットカードです。
メリットその5. 法人カード以上のキャッシュバック率も可能
一般的な相場で言えば
ですので
というのは間違えありません。
しかし、一部の法人デビットカードでは、十分に高いキャッシュバック率のカードがあるのです。
例:GMOあおぞらネット銀行ビジネスデビットカード
キャッシュバック率:1.0%
+
他の金融機関あての振込
他の金融機関からの振込
口座振替(引き落とし)
口座振替登録完了
給与受取
→ GMOポイント各1ポイント
発行会社 | GMOあおぞらネット銀行 |
国際ブランド | VISA,Mastercard |
初年度年会費(税込) | 0円 |
2年目~年会費(税込) | 0円 |
キャッシュバック還元率下限 | 1.00% |
キャッシュバック還元率上限 | 1.50% |
ポイント還元率下限 | - |
ポイント還元率上限 | - |
第三者不正使用保険 | ○1000万円 |
キャッシュバック率1.0%は、高還元率の法人カードと変わらない上に、銀行のサービス利用でポイントも貯まるため、法人デビットカードの方が「お得」になっているのです。
GMOあおぞらネット銀行ビジネスデビットカードは、「お得」でおすすめの法人デビットカードと言えます。
法人カードではなく、法人デビットカードを使う注意点
前述したように
法人カードではなく、法人デビットカードを使う選択肢のメリットは
- メリットその1.審査がない
- メリットその2.キャッシュバック型が多い
- メリットその3.会計処理がしやすい
- メリットその4.利用限度額が大きい
- メリットその5. 法人カード以上のキャッシュバック率も可能
と多く
と思う方も多いと思いますが
法人デビットカードにもデメリットがあり、法人デビットカードだけを利用するといろいろな落とし穴にはまってしまうのです。
法人カードではなく、法人デビットカードを使う注意点を解説します。
注意点その1.法人デビットカードは使えない店舗も多い
法人デビットカードは
- リアルタイムに引き落とし
- 預金残高よりも、支払額が多ければ決済が完了しない
という特徴を持つ、決済用カードです。
だからこそ、利用できない引き落としというものも多いのです。
代表的なものでは
- 毎月支払う月額利用の決済(広告宣伝費、サーバー費用、プロバイダ費用など)
- ガソリンスタンドの決済
- ETCレーンの決済
- 飛行機の機内販売サービス
- 電子マネーチャージ
などが利用できないのです。
ビジネスで利用する機会の多い
- Yahoo!広告
などの支払いも、一部のデビットカードには対応していません。
※一部のデビットカードはご利用いただけません。
利用できなケースがあるので、法人デビットカード単独の運用は厳しく、法人カードとの併用が必要不可欠になってしまうのです。
注意点その2.法人デビットカードには、法人ETCカードは追加できない
前述した通りで
法人デビットカードでは「高速料金」の決済ができません。
法人ETCカードを発行するためには
- 法人カードを作る
- 高速道路会社のクレジット機能がない法人ETCカードを作る
の二択しかないのです。
結局、ここでも法人デビットカード単独の運用は厳しく、法人カードとの併用が必要不可欠になってしまうのです。
注意点その3.法人デビットカードには、サービスがない
法人カードには
- ビジネス優待
- レストラン優待
- ホテル優待
- コンシェルジュデスク
- 空港ラウンジ
- ビジネスラウンジ
- 専門家相談無料
- 海外旅行傷害保険
- 国内旅行傷害保険
- ショッピング保険
・・・
などの付加価値サービスが用意されていますが
法人デビットカードには、ほとんどこのようなサービスが付帯されていません。
なぜなら、発行主体が「銀行」だからです。
このような付加価値サービスを利用したいのであれば、法人カードとの併用が必要不可欠になってしまうのです。
結論
法人デビットカードの中には、法人カードよりも優秀かつ使い勝手の良いカードがあります。
例:GMOあおぞらネット銀行ビジネスデビットカード
- 審査なし
- キャッシュバック率:1.0%
- 年会費永年無料
- 銀行サービスの利用でポイント付与
- Visaビジネスオファー付帯
発行会社 | GMOあおぞらネット銀行 |
国際ブランド | VISA,Mastercard |
初年度年会費(税込) | 0円 |
2年目~年会費(税込) | 0円 |
キャッシュバック還元率下限 | 1.00% |
キャッシュバック還元率上限 | 1.50% |
ポイント還元率下限 | - |
ポイント還元率上限 | - |
第三者不正使用保険 | ○1000万円 |
なのですから、「一般的な法人カードよりもスペックは良い」と言っていいでしょう。
しかしながら、会社経営をしていて法人デビットカードだけで事足りるわけではないのも事実です。
法人デビットカードでは利用できない支払がある
のですから
筆者の意見では
法人デビットカードと法人カードは併用すべき
だと考えます。
- デビットカードが使えるお店では → キャッシュバック率の高い法人デビットカード
- デビットカードが使えないお店では → ポイント還元率の高い法人カード
- 必要な状況に応じて → 法人カードの付加価値サービス
- 法人カードの限度額が不足した場合には → 限度額が大きい法人デビットカード
と、使い分けるのがベストなのです。
上手に使い分けるためには、法人カードと法人デビットカードのメリットデメリットをきちんと理解する必要があります。自分の目的に合った、法人デビットカードと法人カードを探しましょう。
「法人カードではなく、法人デビットカードを使うとどんなメリットがあるの?」
・・・