法人カードに限った話ではありませんが、クレジットカードのキャンペーンというのは、実質的にお得じゃないものが少なくありません。「どういったキャンペーンがお得ではないのか?」解説していきます。
法人カードのキャンペーン立案者の思考
法人カードのキャンペーンを企画するのは
クレジットカード会社の広告宣伝部・マーケティング部のWEB担当者です。
彼らが課されているタスクは
少ない予算で、申込数増やすこと
です。
「無条件に法人カード申込者に10万円プレゼント」
とできれば、こんな簡単なことはありませんが、予算が決まっているので、制限のある中で知恵を絞って、損をしないキャンペーン設計をしているのです。
そこで彼らが考えるのは
「できるだけ付与条件のハードルを上げたい(実質的なコスト負担は減るため)」
「カード会員にお金を遣わせて、カード会社元が取れる付与条件にしたい(実質的なコスト負担がないキャンペーン)」
というものです。
「最大○○円プレゼント!」
と見た目は豪華でも、実質的に損をしてしまうキャンペーンが多いのはこのためなのです。
今回は、全然お得じゃない法人カードキャンペーンの罠のパターンを紹介します。
全然お得じゃない法人カードキャンペーンの罠のパターン
パターンその1.○万円の利用で○円プレゼント
「三井住友ビジネスカード」2018年12月時点のキャンペーン
2ヵ月後までに20万円ご利用で 最大9,000円分プレゼント
のですから、元々20万円遣う予定があったのであれば、9,000円分お得になる計算ですが、この条件をクリアするために20万円の無駄遣いをするのであれば、本末転倒です。
クレジットカード会社にしてみれば
ことになります。
加盟店手数料は、お店の業種や規模によって変わってきますが・・・
クレジットカードの加盟店手数料の目安
加盟店の業種 | 加盟店手数料率 |
---|---|
風俗店 | 7%~10% |
バーやクラブなどの飲食店 | 4%~7% |
一般の小売店や専門店 | 3%~5% |
デパート | 2%~3% |
家電量販店やコンビニエンス・ストア | 1%~1.5% |
クレジットカード会社としては、加盟店手数料は「4.5%」ぐらいは見込めるものなのです。
クレジットカード会社にとってみれば
というキャンペーンは、広告宣伝費をかけずに使える常套手段と言えます。
法人カード利用者が注意すべきポイント
法人カード利用者が注意しなければならないのは
このハードルをクリアするための無駄遣いをしてはいけない
ということです。
これは本末転倒と言わざるを得ません。
パターンその2.リボ払い設定をすると○円プレゼント
「三井住友ビジネスカード」2018年12月時点のキャンペーン
「マイ・ペイすリボ」同時設定&2ヵ月後までに20万円ご利用で 2,000円分プレゼント
というキャンペーンも少なくありません。
「リボ払い設定」をクレジットカード会社がおしすすめるのは
リボ払いだと「リボ払い手数料(利息)」収入が発生するから
に他ならないのです。
リボ払いとは
利用の件数・金額にかかわらず、毎月の支払額が一定になる支払方法のことです。
キャッシングやカードローンなどでも採用されている「リボルビング払い」のことを「リボ払い」と言います。
2018年12月時点のリボ払い手数料
三井住友カード
手数料:実質年率15.0%
JCB
手数料率:実質年率8.04~18.00%
となっています。
「リボ払い手数料」は、締切日時点の利用残高に手数料率をかけて算出します。
リボ払い手数料のシミュレーション
20万円のカード利用を毎月1万円の返済でリボ払いにした場合
- ご利用予定年月日:2019年1月1日
- ご利用予定金額:200,000円
- 手数料率(実質年率):15.0%
- お支払いコース:定額コース
- 月づきのお支払い金額(元金):10,000円
お支払い手数料(合計):25,774円
お支払い合計金額:225,774円(内手数料 25,774円)
となります。
カード利用額の12.8%もの「リボ払い手数料」を負担をすることになります。
というだけなのです。
法人カード利用者が注意すべきポイント
法人カード利用者が注意すべきなのは
このプレゼントキャンペーンをもらうためだけに「リボ払い」設定をする
ということです。
通常の一括払い(一回払い)で支払ができるのであれば、「リボ払い」を使う必要がありません。「リボ払い手数料」を損してしまうだけです。
どうしても、この「リボ払い」設定によるキャンペーンのポイントやギフトカードを手に入れたいのであれば
「リボ払い」設定をしても、すぐに解除する
必要があります。
支払時に「リボ払い」を使わなければ良いだけなのですが、
「リボ払い」には
- 店頭で「リボ払い」を申告する:店頭リボ
- 後から「リボ払い」を設定できる:後からリボ
- カード利用前に「リボ払い」を事前登録する:事前登録リボ
- 「リボ専用」でしか使えない:リボ専用カード
という4種類がありますが、「リボ払い」設定によるキャンペーンをしている法人カードの場合、「事前登録リボ」が多く、設定したら、そのまますべての支払に「リボ払い」が適用されてしまうのです。
パターンその3.追加カード登録(家族カード登録)で○円プレゼント
「JCB法人カード」2018年12月時点のキャンペーン
インターネット新規ご入会と同時に使用者追加で!
1名様につきもれなく、JCBギフトカード
2,000円分プレゼント
となっています。
- 社員用の追加カード
- 家族カード
を設定すれば、その分だけ年会費収入が増えるので、還元できることになります。
前述した「JCB法人カード」の場合は
- 一般カードの追加カード年会費(税込):1,375円(税込)
- ゴールドカードの追加カード年会費(税込):3,300円(税込)
ですので、2,000円を還元しても、1年あれば十分にクレジットカード会社が年会費で元が取れる計算になります。
これも、クレジットカード会社が損をしないキャンペーン設計と言っていいでしょう。
法人カード利用者が注意すべきポイント
法人カード利用者が注意すべきなのは
このプレゼントキャンペーンをもらうためだけに「追加カード」「家族カード」を発行してはいけない
ということです。
元々、社員や役員に使わせたい、家族に使わせたい、という状況で「追加カード」「家族カード」を発行したら、キャンペーンの条件に該当して、ポイントやギフトカードがプレゼントされた。
というのであれば、全く問題はありませんが、わざわざポイントやギフトカード目当てに、必要のない「追加カード」「家族カード」を発行して、「追加カード」「家族カード」分の年会費を多く支払うのであれば本末転倒です。
パターンその4.キャッシング枠の設定で○円プレゼント
「EX Gold for Biz M(エグゼクティブ ゴールド フォー ビズ エム)」2018年12月時点のキャンペーン
キャッシングご利用可能枠の設定で
1,000オリコポイントプレゼント
となっています。
法人カードの場合は、キャッシング枠が設定できないカードがほとんどですので、あまりこのタイプのキャンペーンはないのですが、個人事業主であればキャッシング枠の設定が可能ですので、上記のようなキャンペーン条件が設定されるケースがあります。
のことですから、「高金利で融資を受ける」ことを意味しています。
前述した「EX Gold for Biz S(エグゼクティブ ゴールド フォー ビズ エス)」のキャッシング利息は
貸付の利率
- 100万: 実質年率15.0%
- 90万まで: 実質年率18.0%
ですから、利息制限法ギリギリの高金利です。
概算で計算すると、100万円借りたら、1年間で15万円返済しなければならない計算になります。
法人カード利用者が注意すべきポイント
法人カード利用者が注意すべきなのは
法人カードのキャッシングは枠を設定しても、使わない
ということです。
会社経営をしていれば、資金繰りが苦しくなることは必ずあるはずです。
そのときにキャッシングができる法人カードの枠があれば、24時間365日コンビニATMで資金調達できるということですから、決して悪いわけではありません。
しかし、利息を考えれば、法人カードのキャッシングは最後の手段です。
- 銀行でも借りられない
- 信用金庫でも借りられない
- 出資も期待できない
- ノンバンクでも借りられない
・・・
ときの最後の手段として、使うものですので、キャッシング枠の設定はしても構いませんが、安易に使うものでないことは理解しておくべきです。
法人カードのキャンペーンをお得に活用するポイント
前述した通りで
全然お得じゃない法人カードキャンペーンの罠のパターンには
- パターンその1.○万円の利用で○円プレゼント
- パターンその2.リボ払い設定をすると○円プレゼント
- パターンその3.追加カード登録(家族カード登録)で○円プレゼント
- パターンその4.キャッシング枠の設定で○円プレゼント
というものがあります。
どれを見ても
○万円の利用で○円プレゼント
【法人カード利用者】無駄な支出が増える
【クレジットカード会社】加盟店手数料収入が増える
リボ払い設定をすると○円プレゼント
【法人カード利用者】リボ払い手数料のコスト負担が増える
【クレジットカード会社】リボ払い手数料収入が増える
追加カード登録(家族カード登録)で○円プレゼント
【法人カード利用者】追加カード、家族カードの年会費負担が増える
【クレジットカード会社】追加カード、家族カードの年会費収入が増える
キャッシング枠の設定で○円プレゼント
【法人カード利用者】キャッシングの利息負担が増える
【クレジットカード会社】キャッシングの利息収入が増える
仕組みのキャンペーンが多いのです。
このようなキャンペーンの設計が多いのですから
と筆者は考えます。
ぐらいの認識でいるべきものなのです。
法人カードを比較するのであれば、実際の会社経営で活躍できる
- ポイント還元率が高い
- ステイタス性が高い
- コンシェルジュデスクがある
- 空港ラウンジが利用できる
- レストランで2名以上の利用で1名分無料になるサービスがある
- 海外旅行傷害保険、国内旅行傷害保険の保険金額が大きい
- ビジネスサービスの割引が大きい
ということの方が、何倍も重要なのです。
逆に、あてにしても良い法人カードのキャンペーンというのは
- カード発行だけで、○円分のポイントやギフトカードがもらえる
- 電子マネーの登録だけで、○円分のポイントやギフトカードがもらえる
- 携帯電話・公共料金の支払設定だけで、○円分のポイントやギフトカードがもらえる
- 年1回の利用だけで、○円分のポイントやギフトカードがもらえる
・・・
など「カード利用者側のコスト負担が発生しないプレゼントキャンペーン」です。
これらの「コスト負担が発生しないプレゼントキャンペーン」であれば、法人カードを比較検討する要素として、含めても問題ありません。
- 「カード利用者側のコスト負担が発生するプレゼントキャンペーン」なのか?
- 「カード利用者側のコスト負担が発生しないプレゼントキャンペーン」なのか?
は、前述した「全然お得じゃない法人カードキャンペーンの罠のパターン」を見ればわかると思いますので、法人カードを比較するときは、キャンペーン総額(最大○○円)で比較するのではなく、キャンペーンの付与条件を確認した上で、「カード利用者側のコスト負担が発生しないプレゼントキャンペーン」のみ、比較検討の材料として追加すると良いでしょう。