意外と知られていないのが「法人カード」と「ビジネスカード」と「コーポレートカード」の違いです。今回は、「法人カード」と「ビジネスカード」と「コーポレートカード」の違いについて解説します。
「法人カード」と「ビジネスカード」と「コーポレートカード」の違い
法人カードとは
ビジネスカードとは
コーポレートカードとは
ですから、基本的な機能は同じなのです。
しかし、一般的に
- ビジネスカード → 個人事業主、中小企業
- コーポレートカード → 大企業、中堅企業
が使うものとして分類されています。
- 個人事業主、中小企業が利用する法人カードのことを「ビジネスカード」
- 大企業、中堅企業が利用する法人カードのことを「コーポレートカード」
という形で分類することもあります。
三井住友Visaカードの定義では
- 20名以上のカード使用者がいない → 「ビジネスカード」
- 20名以上のカード使用者がいる → 「コーポレートカード」
と分類しています。
カード名称 | 意味 | 契約主体 | 対象企業 |
---|---|---|---|
法人カード(法人クレジットカード) | ビジネスカードとコーポレートカードの総称 | – | – |
ビジネスカード/個人事業主向け | 個人事業主向けの経費決済用カード | 個人事業主 | 個人事業主 |
ビジネスカード/法人経営者向け | 法人経営者向けの経費決済用カード | 法人経営者 | 従業員20名以下 |
コーポレートカード | 法人向けの経費決済用カード | 法人 | 従業員20名超 |
パーチェシングカード | 加盟店を特定できる法人向けの経費決済用カード | 法人 | 従業員20名超 |
実際に「ビジネスカード」と「コーポレートカード」を両方提供しているクレジットカード会社を見てみると
例
三井住友コーポレートカード
お申し込み対象:大企業向け(カード使用者は20名以上が目安となります)
JCBコーポレートカード
大規模企業向け一括決済型法人カード
「大企業」と明確に表示していることがわかります。
アメリカン・エキスプレス®・コーポレート・カード・プログラム
株式会社ミズサワセミコンダクタ 様(2018年『東洋経済オンライン』掲載記事より抜粋)
株式会社マネーフォワード 様(2018年『東洋経済オンライン』掲載記事より抜粋)
イチビキ株式会社様(2017年『東洋経済オンライン』掲載記事より抜粋)
株式会社サーバーワークス様(2017年『東洋経済オンライン』掲載記事より抜粋)
スポルディング・ジャパン株式会社様(2016年『東洋経済オンライン』掲載記事より抜粋)
豫州短板産業株式会社様(2016年『東洋経済オンライン』掲載記事より抜粋)
アメリカン・エキスプレス®・コーポレート・カード・プログラムでは、利用している企業の情報が掲載されていますが、社員数を調べてみると
社員数
- 株式会社マネーフォワード:394名(連結)
- イチビキ株式会社:600名(正社員230名)
- 株式会社サーバーワークス:135名 (2018年現在)
- スポルディング・ジャパン株式会社:不明
- 豫州短板産業株式会社:174名 (2017年9月現在)
ですから、
簡単に言えば
- 社員数:100名以上
- カード利用者数:20名以上
の会社が、使うのが「コーポレートカード」であって
それよりも規模の小さい企業、個人事業主が使うのが「ビジネスカード」なのです。
総称して、「法人カード(法人クレジットカード)」と呼びます。
一部例外もあります。
- オリコビジネスカードGold(ゴールド) → 社員数や規模の制限なし
- ダイナースクラブ コーポレートカード → 社員数や規模の制限なし
これらのコーポレートカードは「大企業」限定というものではなく、社員数数名の法人でも、申し込んで利用することができます。
「コーポレートカード」のメリット
メリットその1.カードごとに利用枠設定可能
会社全体で利用枠が設定されて、そのあとに「カード利用者ごと」「部署ごと」に利用枠を会社が設定できるようになっています。
例:三井住友コーポレートカード
カードごとに利用枠設定可能
貴社全体の総利用枠に加え、カード使用者ごとに利用枠を設定することができます。
例:オリコビジネスカードGold(ゴールド)
カード利用者ごとにカード利用枠を設定
1法人あたり10万円~1,000万円(総利用可能枠)までご利用できます。
最大で20枚発行でき、1枚ごとのカード利用枠を設定可能です。
国際ブランド | Mastercard® |
初年度年会費(税込) | 0円 |
2年目~年会費(税込) | 2,200円 |
年会費優遇条件 | - |
ポイント還元率/基本 | 0.00% |
ポイント還元率/上限 | 0.00% |
ポイント倍増方法 | - |
メリットその2.社員用は無料
社員に対しては、追加カードを発行する形になりますが、追加カードの年会費が無料のコーポレートカードがあります。
例:JCBコーポレートカード
企業年会費
企業年会費:33,000円(税込)
個人年会費:無料
「法人カード」と比較して、企業が支払う年会費が高く設定されている反面、社員用の追加カードの年会費が無料になっているのです。
メリットその3.利用明細が会社全体、部署別、カード別で3パターン用意される
例:三井住友コーポレートカード
利用データ還元可能
経費把握と予算管理分析資料としてお役立ていただけるよう、
(1)会社全体
(2)部事業所別
(3)カード別の3種類の請求書・ご利用明細を、カード担当者やカード使用者へお送りいたします。
また、ご希望によりカードのご利用明細データを、データ伝送や電子書留サービスでお渡しすることもでき、貴社のシステムへのデータ接続も可能です。
また、カード使用者は、Vpassでご自身のカードのご利用状況を随時ご確認いただけます。社用経費精算の際に便利です。
例:大手企業向け コーポレートカードシステム(CCS)
ダイナースクラブのソリューション
リクエストに応じて集計資料をデータでご提供
「法人カード」では、カード別の利用明細になってしまいます。
メリットその4.支払い方法で「請求書支払い」が選べる
例:三井住友コーポレートカード
考察
上記を見ればわかる通りで
コーポレートカードは、一定規模の人数で追加カードを利用する企業を前提とした法人向けクレジットカードなのです。
- 限度額を「個人ごと」「部署ごと」に設定可能
- 追加カード発行が無料
- 経費レポートが「全体」「部署ごと」「カードごと」に設定可能
- 支払い方法で「請求書支払い」が選べる
なのですから、会社としては
- コスト負担が軽い
- 部署による予算管理ができる
- 集計レポートで経費作業が簡単になる
- 経理などの業務負担が減る
というメリットがあるのです。
コーポレートカードのデメリット
デメリットその1.ラインナップが手薄
基本的には「コーポレートカード」は、クレジットカード会社につき1枚程度しか発行されておらず、プロパーカードがほとんどなのです。
前述した
- JCBコーポレートカード
- 三井住友コーポレートカード
- アメリカン・エキスプレス®・コーポレート・カード
- ダイナースクラブ コーポレートカード
- オリコビジネスカードGold(ゴールド)
ぐらいしかないのです。
「法人カード」は、100枚以上は発行されていて、ご自身の会社にあったクレジットカードを選ぶ場合には、「法人カード」の方が選択肢が多いのです。
デメリットその2.特典が手薄
コーポレートカードの発行枚数の少なさを見ても、わかる通りで、多くのクレジットカード会社は「法人カード」に力を入れています。
大企業の数は、企業全体の0.3%に過ぎないため、中小企業、零細企業、個人事業主をターゲットにした方が何倍もクレジットカード会社の売り上げが伸びる可能性があるからです。
中小企業、零細企業、個人事業主をターゲットにする場合は
- ポイント還元率が大きい
- マイル還元率が大きい
- レストランのコース利用で1名分が無料になる
- 有名ホテルのスイートルームが50%OFF
- 海外空港ラウンジが利用できる
- 空港までの送迎サービスがある
- 海外旅行傷害保険が充実している
- コンシェルジュデスクがある
・・・
等の「付帯サービス」を充実させる必要があるのです。
実際に同じカード会社での特典の違いを見てみると
例:オリコカード
法人向けのビジネスカード → EX Gold for Biz M(エグゼクティブ ゴールド フォー ビズ エム)
ポイントサービス(オリコのポイントサービス暮らスマイル)
Mastercardビジネスアシスト(Mastercardブランドのみ)
Mastercard T&E Savings(Mastercardブランドのみ)
Visaビジネスオファー(Visaブランドのみ)
Visaゴールドカード優待特典(Visaブランドのみ)
福利厚生サービス「ベネフィット・ステーション」
ご融資金利優遇制度
各種保険
空港ラウンジサービス
コーポレートカード → オリコビジネスカードスタンダード、オリコビジネスカードGold(ゴールド)
空港ラウンジサービス
Mastercardビジネスアシスト
福利厚生サービス「ベネフィット・ステーション」(オプション)
各種保険
デメリットその3.ステイタス性が薄い
どのコーポレートカードも、ゴールドカードまでしかありません。
- JCBコーポレートカード → ゴールドカード
- 三井住友コーポレートカード → 一般カード、ゴールドカード
- アメリカン・エキスプレス®・コーポレート・カード → 一般カード、ゴールドカード
- ダイナースクラブ コーポレートカード → 一般カード
- オリコビジネスカードGold(ゴールド) → ゴールドカード
「法人カード」には^
- プラチナカード
- ブラックカード(ブラックカードレベルの法人カード)
があるのです。
デメリットその4.年会費が高い
一部のコーポレートカードでは、年会費も高く設定されています。
企業年会費:33,000円(税込)
というのは、JCBプラチナ法人カードと同じ年会費設定です。
ビジネスカードであれば、一ランク上のカードを持てる年会費設定ということです。
「コーポレートカード」を選ぶべき会社とは?
前述した通りで
のクレジットカードです。
目安としては
- 社員数が100名以上
- 追加カードを利用する社員数が20名以上
と考えれば良いでしょう。
追加カードを利用する社員数が多ければ多いほど、管理が煩雑になり、コスト負担も大きくなるため
- 利用人数が増えてもコスト負担が軽い
- 部署による予算管理ができる
- 集計レポートで経費作業が簡単になる
「コーポレートカード」を利用するべきなのです。
一方で、
- 追加カードを利用する社員数が20名未満
- 社員数が100名未満
の会社であれば
- カードの選択肢が多い
- ポイントが貯まりやすい
- マイルが貯まりやすい
- 優待特典が豊富
- コンシェルジュデスクがある
- ステイタス性の高いプラチナカード、ブラックカードがある
「ビジネスカード」の中から、自分の会社、自分にあった法人カードを比較すべきなのです。
また、社員には「コーポレートカード」を持たせても、経営者、役員、幹部社員だけは、ステイタス性の高い「ビジネスカード」を持って、使い分ける方法もあります。
「コーポレートカード」を使うような規模の会社で、経営者が一般カードを使うのは、イメージが損なわれてしまい、経営に支障がでる可能性もあるので、併用することをおすすめします。
まとめ
コーポレートカードとは
- 大企業が利用する経費支払い用のクレジットカードのこと
を言います。
- 「ビジネスカード」:中小企業、零細企業
- 「コーポレートカード」:大企業、中堅企業
と考えると良いでしょう。
「コーポレートカード」のメリット
- メリットその1.カードごとに利用枠設定可能
- メリットその2.社員用は無料
- メリットその3.利用明細が会社全体、部署別、カード別で3パターン用意される
コーポレートカードのデメリット
- デメリットその1.ラインナップが手薄
- デメリットその2.特典が手薄
- デメリットその3.ステイタス性が薄い
基本的には、「ビジネスカード」の方が利便性が高く、選択肢も豊富で、お得なクレジットカードなので、経費支払いでクレジット決済を利用する社員数が20名未満であれば、「ビジネスカード」を選んでおけば間違えないでしょう。
経費支払いでクレジット決済を利用する社員数が20名を超えるようであれば。大人数でのコストメリットがある、経費管理がしやすい「コーポレートカード」を検討すべきです。
一番利用している経営者・個人事業主が多い法人カードとは?
「法人カードとコーポレートカードの違いは何?」
「法人カードとビジネスカードの違いは何?」
・・・