会社をたたむと決めたとき、法人カードをどう閉じるかは後回しになりがちです。しかし「解散したからカードも自動で止まる」わけではありません。2026年11月2日にジェーシービーのよくあるご質問を読むと、法人カードの登録会社を変更できるかどうかは理由ごとに分かれており、解散は「現在契約している会社とは別会社になるため手続き不可」に分類されています。契約を続けられないので、退会してから新規に申し込む形になります。一方で会社法は、解散しても法人格がすぐ消えるとは定めていません。清算が終わるまで法人は残り、その間に債権者へ公告し、債務を弁済してから残りを配ります。順番を間違えると、清算人が困ります。条文と各社の案内で整理します。
先に結論
- 株式会社の解散の事由は会社法第471条の6つ。実務でいちばん多いのは第3号の株主総会の決議です。
- 解散しても法人格は残ります。会社法第475条で清算が始まり、清算が結了するまで法人は存続します。
- ジェーシービーは、登録会社の変更ができるかを理由ごとに表で示しており、解散と事業譲渡、合併の消滅会社、新設合併は「手続き不可」です。
- 手続き不可の場合は「ご契約を継続することができないため、退会手続き後に新規でカードの申し込みが必要」と案内されています。
- 清算では会社法第499条により、債権申出の公告と知れている債権者への催告が要り、期間は2か月を下れません。カードの未払い分もこの債務の一つです。
- 会社法第502条で、債務を弁済した後でなければ残余財産を株主に分配できません。カードの引き落としを先に終わらせる順番になります。
解散の事由は会社法471条に6つ書いてある
まず、何をもって解散というのかを条文で押さえます。会社法第471条は「株式会社は、次に掲げる事由によって解散する」として6号を並べています。

| 号 | 事由 | 法人カードの観点 |
|---|---|---|
| 第1号 | 定款で定めた存続期間の満了 | 期限が来れば自動的に解散する。カードの更新時期と重なることがある |
| 第2号 | 定款で定めた解散の事由の発生 | 事由の内容は定款次第 |
| 第3号 | 株主総会の決議 | 実務でいちばん多い。日付を自分で決められるので、退会の段取りも組める |
| 第4号 | 合併(合併により当該株式会社が消滅する場合に限る) | 消滅会社側はカードの名義を引き継げない |
| 第5号 | 破産手続開始の決定 | 清算ではなく破産手続に移る |
| 第6号 | 第824条第1項または第833条第1項の規定による解散を命ずる裁判 | 会社の意思ではなく裁判で解散する |
同じ条文の並びには、第472条の「休眠会社のみなし解散」もあります。登記が最後にあった日から12年を経過した株式会社について、法務大臣が2か月以内に事業を廃止していない旨の届出をすべき旨を官報に公告し、届出をしないとその期間の満了時に解散したものとみなされる、という仕組みです。放置していたつもりが解散扱いになることがあるという意味で、法人口座を10年放置すると預金保険機構へ移ると並べて覚えておくと、休眠のまま放置する危うさが見えます。
解散しても法人格は消えない。清算が始まる
誤解されやすいのがここです。会社法第475条は「株式会社は、次に掲げる場合には、この章の定めるところにより、清算をしなければならない」とし、第1号に「解散した場合」を挙げています(合併で消滅した場合と、破産手続が終了していない場合は除かれます)。つまり解散は終わりではなく、清算という手続きの入口です。
この違いはカードの実務に直結します。解散した瞬間に法人がなくなるわけではないので、清算中も支払い義務は残ります。カードの引き落とし口座も、清算が終わるまでは生きている必要があります。
清算が始まる。法人格は残る。登記上は「解散」の記載が入る
債権の申出を公告し、債務を弁済する。カードの未払い分もここに含まれる
残余財産を株主へ分配できる。会社法第502条が順番を定めている
法人格が消滅する。ここまで来るとカードの名義人はもう存在しない
ジェーシービーは「解散は手続き不可」と表で示している
では、カード会社はどう扱うのか。ジェーシービーのよくあるご質問「【法人カード】登録している会社名を変更したい。」には、変更理由ごとに手続きの可否を示した表が置かれています。

| 変更理由 | 手続きの可否 | 公式の説明 |
|---|---|---|
| 合併(存続会社・吸収する側) | 手続き可能 | 書面での手続き。資料コードナンバー0075026で諸変更届を請求する |
| 分割(存続会社・残る側) | 手続き可能 | 同上 |
| 合併(消失会社・吸収される側) | 手続き不可 | 現在契約している会社とは別会社になるため |
| 新設合併(両社とも解散) | 手続き不可 | 同上 |
| 事業譲渡 | 手続き不可 | 同上 |
| 解散 | 手続き不可 | 同上。退会手続き後に新規でカードの申し込みが必要 |
境目は「法人格が同じまま残るか」です。吸収合併の存続会社や分割で残る会社は、法人格が続くので名義を書き換えられます。解散・事業譲渡・消滅会社は、カード会社から見ると契約の相手が別人になるため、名義変更では処理できません。手続き不可の場合の案内は「ご契約を継続することができないため、退会手続き後に新規でカードの申し込みが必要です。詳しい手続き方法は、カード裏面に記載のカード発行会社までお問い合わせください」です。
「代表者が変わる」と「会社が解散する」は別の話
代表者の交代なら法人格は同じなので、カードは所定の手続きで続けられます。扱いは系統によって違い、JCB CARD Biz・Biz ONEのように変更できず退会になる商品もあります。詳しくは法人カードの代表者が変わったら?にまとめています。
これに対して解散は、名義の書き換えという選択肢がそもそもありません。新しい会社でカードが要るなら、改めて審査を受けることになります。
三井住友カードの窓口と、送る先
発行会社によって退会の窓口は違います。三井住友カードは、カードの退会(解約)をオンラインで24時間受け付けており、ビジネスカードforOwnersとビジネスオーナーズの会員も同じ画面で手続きできると案内しています。これとは別に、法人カードの各種手続きをまとめたページがあり、カードの追加・再発行・切替え・退会、会社住所や電話番号の変更、法人代表者変更が並んでいます。

書面で出す場合の送付先も公開されています。同社の退会依頼書には「〒542-8733 大阪南郵便局私書箱第160号 三井住友カード株式会社 変更センター宛」と記載があり、封筒の裏面に会社名・所在地・担当者名を必ず書くよう求められています。清算人が会社の住所を引き払ったあとに書類を出す場面では、差出人欄をどう書くかが問題になるので、郵送より先にオンラインで処理できないかを確認しておくほうが早く終わります。
どの系統がWebで完結し、どの系統が電話や書面になるかは、法人カードの解約はWebでできない系統があるで3社を並べています。
清算の順番。カードの残債を先に片づける理由
清算の手順そのものも条文で決まっています。会社法第499条第1項は、清算株式会社は第475条各号に該当することとなった後、遅滞なく債権者に対し一定の期間内に債権を申し出るべき旨を官報に公告し、知れている債権者には各別に催告しなければならないと定め、「ただし、当該期間は、二箇月を下ることができない」と続けます。第2項では、期間内に申出をしないと清算から除斥される旨を公告に付記するよう求めています。
そして第502条は「清算株式会社は、当該清算株式会社の債務を弁済した後でなければ、その財産を株主に分配することができない」と定めています。カードの未払い分は会社の債務ですから、残余財産の分配より先に終わらせる必要があります。
カードの利用を止める
解散の決議日を決めたら、その前後で新しい決済が発生しないように使用者カードから回収する。引き落とし口座は残したままにする
未確定の利用を確定させる
締め日をまたいだ利用が請求に載るまで待つ。年会費の課金日が近い場合は、退会の期限と合わせて確認する
退会を申し出る
発行会社の窓口へ。JCBは電話または書面、三井住友カードはオンラインまたは書面。解散を理由にした名義変更はできない
残債を弁済する
会社法第502条により、債務の弁済が残余財産の分配より先。引き落とし口座の残高を確保しておく
口座を閉じる
カードの引き落としが完了したことを確認してから法人口座を解約する。順番を逆にすると引き落とし不能になる
注意したいのは、引き落とし口座を先に閉じてしまうケースです。清算の実務では口座の整理を急ぎがちですが、カードの最終請求が落ちる前に口座を解約すると、引き落とし不能になって督促が清算人に向かいます。カードの残債が消えたことを明細で確認してから口座を閉じる、という順番を守ってください。
なお、法人カードには代表者個人が連帯保証人になっている系統があります。法人が消滅しても保証債務まで当然に消えるとは限らないため、連帯保証の有無は解散の前に確認しておくほうが安全です。各社の定め方は法人カードに連帯保証人は必要?で比べています。
法人の解散と法人カードについてよくある質問
解散した会社のカードを、新しく作る会社に引き継げますか
引き継げません。ジェーシービーは解散を「現在契約している会社とは別会社になるため手続き不可」に分類し、退会手続きの後に新規でカードを申し込む必要があると案内しています。新しい会社では、改めて審査を受けることになります。
合併ならカードはそのまま使えますか
立場によります。吸収合併で存続する側(吸収する会社)は手続き可能と示されています。吸収される側の消失会社と、両社とも解散する新設合併は手続き不可です。分割の場合、残る側の存続会社は手続き可能です。
解散したら法人カードは自動で止まりますか
カード会社が自動で解約してくれるとは案内されていません。解散の登記をしても、カード会社に届け出なければ契約は残ります。年会費の課金日が来れば請求も発生します。清算の作業項目として、退会の申し出を明示的に入れてください。
清算中にカードを使ってもよいですか
法律上、清算株式会社は清算の目的の範囲内で存続します。カードの利用が清算事務に必要かどうかは個別の判断になるため、清算人と税理士に確認してください。この記事では、カード会社が清算中の利用について特別な扱いを公表しているかどうかまでは確認できませんでした。
債権申出の公告は2か月でよいのですか
会社法第499条第1項ただし書は「当該期間は、二箇月を下ることができない」と定めています。2か月より短くできないという意味で、2か月ちょうどにしなければならないわけではありません。期間内に申出をしないと清算から除斥される旨を公告に付記することも、同条第2項で求められています。
この記事で確認した一次情報
- e-Gov法令検索「会社法(平成十七年法律第八十六号)」第471条・第472条・第475条・第499条・第502条 https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086(令和8年8月12日施行版を2026年11月2日に表示)
- ジェーシービー よくあるご質問 No.13918「【法人カード】登録している会社名を変更したい。」https://j-faq.jcb.co.jp/faq/show/13918(2026年11月2日に表示。変更理由ごとの可否の表と、手続き不可の場合の案内)
- 三井住友カード「ビジネスカードの各種お手続き」https://www.smbc-card.com/hojin/admin_business/index.jsp(2026年11月2日に表示)
- 三井住友カード「カードの退会(解約)」https://www.smbc-card.com/mem/update/card_taikai/index.jsp(2026年11月2日に表示。オンライン24時間受付、ビジネスカードforOwners・ビジネスオーナーズも対象)
- 三井住友カード「退会依頼書」https://www.smbc-card.com/content/dam/smcc/jp/ja/hojin/admin_business/pdf/taikai.pdf(2026年11月2日に表示。送付先と差出人の記載方法)










